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水草肥料の間違った認識とは。

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水草肥料は万能薬じゃない!間違った認識

水草肥料は万能薬じゃない!間違った認識

「水草に与える肥料で、エビや魚に影響のない商品ありますか?」なんて聞かれることがあります。
 これ、肥料について詳しくない人ということが、質問の時点で分かります。

 なぜなら、肥料の根本的な部分を理解してないから。

 こういう方は、評判の良い肥料なら水草を元気にしてくれると思っているかもしれません。
 肥料はどんな症状の水草も改善してくれる万能薬ではないのですけども。

 今回はそんな肥料の間違った認識について書いてみます。

水草肥料は何のために使う?

水草が不足してる又は不足しそうな栄養を与え、水草が育つ環境を作る

 さて、水草肥料は何のために使うんでしょう?

 これは決して馬鹿にしてる訳ではありません。
 ただとても大事なところ、肝心要(かんじんかなめ)です。

 私が考える肥料は、

「水草が不足してる又は不足しそうな栄養を与え、水草が育つ環境を作るため」です。

 で、これが世間では一般的に“水草に栄養を与える”って簡単な言い回しになっています。

 でもですね、この“水草に栄養を与える”って言葉だけでは、勘違いしやすいのも確かです。
 大事なのは、「不足してる栄養を与える」と「環境を作る」って部分なんですけど、説明されてないですから。

3大栄養素と微量元素

 水草が欲する栄養素には、窒素・リン・カリウムの「3大栄養素」、そしてカルシウム・マグネシウム・硫黄・鉄・ホウ素・マンガン・亜鉛・モリブデン・銅・塩素などが必要です。

 アクアリウムにおける水草栄養では、3大栄養素以外の成分をまとめて「微量元素」と呼びます。

 他にも炭素・水素・酸素といった水や気体から得られるもの、また植物の種類によってはニッケル・ケイ素・コバルト・ナトリウムなんかが必要になる種もあります。

 そしてここからが、大事なところ。

 市販されている商品ならどの肥料もこれら栄養素をすべて配合してるかというと、そうではありません。

 肥料によって含有栄養を変え、成分比率を変え、商品の個性を出しています。

欠乏成分を含む肥料でなければ意味がない

 調子の悪い水草には、欠乏してる(必要としてる)栄養素を入れないと、水草は全く改善しないです。
 いや、改善しないどころか、逆にもっと悪化します。

 そして、水草が欲している栄養は状況で変わるから、いつも同じ栄養ってわけじゃありません。

 つまり肥料を選ぶなら、枯渇してる栄養素が含まれた商品を選ばないと意味がないんですね。

 じゃあ売れてる人気肥料はすべての栄養を含んでるかって言ったら、そんなことはありません。

 だから、肥料は評判とか人気で選ぶんじゃなくて、水草が欲してる栄養素が含まれた商品を選ばないとなんです。

 もし「効果が凄い肥料ないかな?」なんて肥料を万能薬のように考えてる方は、まず水草が吸収する栄養素にはどんなものがあるか水槽環境で欠乏しやすい栄養素は何か、そんな基本的な事から覚えていく必要があります。

この肥料で水草が改善した!施肥の勘違い

 アクアリスト仲間やネットの情報、SNS等から「この肥料で水草が絶好調に育った!不調から改善した!」なんて、商品を紹介されたりします。皆さんも経験があるんじゃないでしょうか。

 ですが、勘違いしないように。

 そうです。その商品が自分の水草に効くかどうか判らないって事です。

 肥料についてよく知らない人は「この肥料は水草が元気になったから効果ある!」「いつも使ってるからおすすめ!」なんて安易に言ってしまうものですから、注意しましょう。

熱帯魚が居れば陰性水草は育つ!?

熱帯魚が居れば陰性水草は育つ

「熱帯魚が居れば、モスとかアヌビアスナナとか陰性水草なら肥料なしで育つよ」って耳にするかもしれません。

 これも信じちゃいけない言葉。

 いくら栄養要求度が少ない陰性水草であっても、植物であることに変わりありません。

 つまり各種栄養がバランス良く必要です。

 あの言葉は“魚の餌や排泄物から栄養が得られるから肥料は要らない”って意味なのでしょうけど、まずカリウムは欠乏しますし、鉄分やホウ素なんて微量元素も不足しやすい。

 それ以前に、水草量や水槽サイズに対して魚数や餌量が控えめならば、窒素はもちろんリンだって足りないでしょう。

 一言で解決できる簡単な話じゃないですね。

南米ウィローモスの養分吸収に液肥が有効

 「ウィローモスなら水道水に入れとけば増える」なんてもう論外で、“植物は水があれば育つ”って言ってしまう人もいます。

 そんなわけありません。

 ちなみに、照明も当てないバケツの水に陰性水草を入れて何ヶ月も保持できるのは、育ってるとは言いません。

 これは光合成量が少なく水草の成長が極めて遅いから必要な栄養量が少ないこと、草体自身が初めから保持してる栄養を消費してること、そして自身の部分的に枯れた下葉などから溶出した栄養を再度自分で吸収して、なんとか維持してる状態です。

 また、野外に溜めた水桶には、いろんな栄養が舞い込んできます。

 砂埃のミネラルから虫の死骸や卵、細かい落ち葉など有機物、猫が足を洗ったり飲んだりしても栄養素が入ってくる。

 人間からすれば水道水しか入れてないつもりでも、そんな水に入ってる水草は栄養を得てたりもします。

 水道水に含まれる十分な栄養素ってカルシウムくらいしかありません。
 水草にとってはマグネシウムだって寂しいし、その他の窒素・リン・カリウム・硫黄・鉄分・ホウ素・マンガン・モリブデン・亜鉛・銅といった栄養素は基本、水道水だけじゃ足りないと考えて間違いありません。

環境の違いを考えてないから言える

 もしあなたの水槽のウィローモスが、肥料添加無しで元気に育ってるのなら、底床にソイルを使っていませんか?

 各種栄養を含むソイルブランドであれば、溶出する栄養を得てウィローモスが綺麗に育つ状況もあります。肥料を入れなくても。

 でもこれ、大磯砂やサンド底床では同じように育ちません。ソイルのようにバランス良く栄養を溶出しないからですね。

 そういった環境の違いも考慮する必要があります。

元気な水草の定義が違う

 同じ水草を見ても、人によって感じ方は変わります。

 元気に育ってると思う人もいれば、葉色は悪く下葉は枯れ気味なんて見れる人もいる。

 “元気な水草”って定義自体に、人それぞれ違いがあったりします。

 特に水草の経験が少ない初心者と、いろんな環境や症状を経験してきた玄人では、全く違う表現になるんじゃないかなと思います。

施肥で水草が育つ環境を作る

 施肥することで水草に足りない栄養素を賄うと同時に、水草が育つ水槽環境を作ります。

 なぜ“環境”かというと、肥料成分は必ず水質に影響を与えるからです。
 どんな肥料商品であっても、良いにしろ悪いにしろ水槽環境に影響します。

 肥料に含まれる炭酸カリウムやマグネシウムといったミネラル分は硬度やアルカリ度を上げますし、窒素分やリン酸塩や硫黄分は酸性度を強くします。pHやGH硬度、KH硬度に影響する。

 また、熱帯魚やヌマエビ、貝類、微生物までが、それら肥料に含まれる各種栄養素を得て成長(繁殖)します。
 生体だって水質に依存して健康を保ってる。

 つまり、水草だけに効く肥料なんてありません。

施肥で水草が育つ環境を作る

 だから水草が欲する栄養素を与えると同時に、水質も意識して量を加減していきます。水草だけ考えるんじゃなくて、水槽全体の環境も考えて施肥するんです。

 こんなこと言うと考えることが増えて、さらに難しくなってると思うかもしれませんが、実はこれが水草を元気に育てる近道だったりします。

水草も魚もエビも考えた環境づくり

水草も魚もエビも考えた環境づくり

 pHに関してのみ言えば、アクアリウムで流通する水草はどの種もpH6.0〜pH7.0の間ならまず育ちます。
 軟水を好む水草だって、多少の硬度にはちゃんと順応する。

 そして水草も魚もエビも水質に許容範囲がありますから、アルカリ性を好む熱帯魚だって多少の弱酸性なら順応するんですね。

 ちなみに、肥料を入れたらエビや魚が過敏に反応するのは、入れ過ぎの目安にもなります。施肥量が多いって捉えても、あながち間違いじゃありません。

 大抵エビが過敏に嫌がるのってカリウム液や鉄液といった液肥で、入れた途端激しく泳ぎ回ったり、急に固まって口も手も動かなくなるのは、過剰に入れ過ぎなんです。

 水草にとって栄養バランスはとても大切で、例えばカリウムだけが多過ぎるとカルシウムやマグネシウム、鉄分、窒素やリンまで欠乏症状が出やすくなるし、鉄分だけ多くてもカルシウムや亜鉛、マンガン、リン酸なんかの吸収を阻害してしまう。

 だから液肥は、ドバッと入れるんじゃなくて少しずつ入れるのが、水草にとっても生体にとっても環境を崩さないセオリーなんです。
 エビが背中を足でカキカキする程度までに添加量を抑えるってこと。

 もちろん、水流に乗せて素早く拡散させたり、換え水に混ぜて薄めつつ添加する気遣いは基本ですね。
 くれぐれも生体狙って入れないように。

園芸用肥料に注意

 園芸用肥料の方が水草用肥料より安価に手に入るので、使おうと考えるかもしれません。

 ただし園芸用肥料を水槽に使用するには、植物の必須栄養の知識はもちろん、水草に適した各栄養素のバランス(比率)もある程度知らなければ、うまく使いこなすのは難しいです。

「どちらも肥料なんだから」なんて安易に園芸用を使うと、高い確率で痛い目に遭います。

 園芸用肥料は水草用肥料の成分バランスとは全く違います。

 水草用ならどの商品も成分比率は似通ってきますけど、園芸用は“たくさん花を咲かせるため”とか、“実を付けるため”とか、“大きく育てるため”とか、目的に合わせて成分比率がバラバラです。

 そして大抵の場合、水草にとって園芸用肥料はリン比率が多過ぎる。

 水草が使い切れない過剰なリンは、アオミドロや黒髭コケ等の厄介なコケを招く大きな原因になりますから。

 さらにもう一つ大きな違いは、園芸用肥料の多くがカルシウムをたくさん配合しています。

 水草水槽ではカルシウムが多いと、全く良い事がありません。
 pHやGH、KHをどんどん上昇させて水草の新芽は萎縮して成長が止まり、途端に環境を崩してしまうんですね。

 確かに園芸用にも特定の水槽環境だったら使える肥料はありますが、テキトーに選んで環境を駄目にしてしまうくらいなら、多少割高であっても素直に水草用を選ぶ方が、安全かつ圧倒的に安上がりでしょう。

水草肥料の間違った認識まとめ

水草肥料の悩みと回答

 今回は水草肥料の基本的な部分ではなく、「あ〜それ考え方違うな」と思った過去の記憶を元に書いてみました。

 いろんな方と話をすると、私が思い付かない考え方や悩みがあるなと実感します。
 今回はそんな疑問に、私なりの回答という感じです。

 絶対に必要な知識じゃないんですけど、こういった内容を知ってるのと知らないのとでは、施肥感覚を理解するスピードが格段に早くなるんじゃないかなと思います。

 

 ちなみに肥料の基本については、こちらもご覧ください。

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