炭酸カリウム液肥を自作して水草育成のスキルアップ!

水草を育てるための3大栄養素のひとつ、カリウム。
水草の成長に必要不可欠なミネラル栄養素です。
カリウムは植物の消費量も多く、水換えで流出しやすい、魚の排泄物からもほぼ供給されないなど、水槽内で最も枯渇しやすいミネラルですから、固形肥料や液肥での肥料添加が必ず必要になります。
そんな水草のカリウム補給に、炭酸カリウム粉末を使った自作カリウム液肥の作り方と、正しい使い方のコツをご紹介します。
といっても作り方はとても簡単で、どちらかというと大切なのは使い方。
作ったはいいけど間違った使い方をすれば逆に水草の成長を阻害しますし、最悪、熱帯魚やエビの死にも繋がります。
元気な生体の泳ぐ美しい水草水槽のため、水草育成のスキルアップの参考になれば嬉しいです。
目次
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自分で作るカリウム液肥の手順
まず、自作カリウム液肥を作る手順です。
用意するものも少なく誰でも簡単に作れますから、簡潔に説明していきます。
用意するもの

- 炭酸カリウム粉末50g
- 精製水500ml
- スプレーボトルなど空容器
用意するものはこれだけ。
炭酸カリウム50gを500ml精製水に溶かせば、11%濃度の炭酸カリウム水溶液が出来ます。
ちなみに、カリウムのみの分子量で考えると約5%程度のカリウム液です。
(炭酸カリウムはK2CO3)
生体の居る水槽に使うので、炭酸カリウム粉末は純度99%以上の食品添加物グレードのものを用意します。
アクアリウムで定番の通販チャームさんで売ってます。
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(※アマゾンは他社類似品)
50g以上入ったお得な商品を買っても大丈夫ですが、おすすめは50gパックです。
500ml分のこの自作カリウム液肥は言うほど早く終わりませんし、炭酸カリウムは性質上、密封しないと湿気を吸収して液化してしまうので、保存にちょっと気を使います。
また、買った粉末量そのまま使い切れば計量も要りませんし、50g分でも自作すれば既製のカリウム液肥商品を買うより圧倒的に安く作れます。
ちなみにカリウム液肥は、水道水を一度沸騰させて塩素(次亜塩素酸ナトリウム)を飛ばし冷ました水でも作ることが可能です。
ただ精製水なら元がpH6前後と、水道水よりpHが低いので自作カリウム液肥のpHを少し抑えることができて、さらに余計な不純物の心配も無いのでおすすめです。
しかも精製水は、ドラッグストアで100円程度で買えちゃいます。
買いに行くのが面倒という方は、こちらどうぞ。
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精製水であればブランドは関係ありません。
また空容器については、別に500ml入るポンプボトルでなくても大丈夫です。
私は空の500mlペットボトルに一度作ってから、小さいスプレー容器に小分けに移して使っています。

水量が少ないミニ水槽は特に、ミストスプレーのような1プッシュの吐出量が少ない物でないと、調整できず過添加になってしまいます。
45センチ水槽以下の水量なら1プッシュ1mlは多すぎて使いづらいので、100円ショップで売ってる化粧用ミストスプレーなど吐出量約0.1ml程度のものがおすすめです。
(写真のミニボトルはダイソーで購入。)
水と混ぜる時の注意点
自作でちょっと注意点が、水と混ぜる時。
炭酸カリウム粉末は水に溶ける際に少し反応熱が発生しますから、ある程度量のある水でさっと溶かしましょう。

空容器が乾燥してる状態で、まず先に炭酸カリウムを入れてから精製水を注ぐ順序が一般的です。
ただし、濡れた状態の空容器に粉末を入れたり、ロート(漏斗)が濡れてたりするとあまり良くありません。少量の水に粉末が付かないように。
ちなみに、先に容器に水を400ml程度入れておいてから炭酸カリウム粉末を入れても、特に問題はありません。園芸用に作る手順はだいたい水が先ですから。
水400ml程度と粉末を混ぜたらフタ(キャップ)をして、完全に溶けるまでよく振ります。
溶けたら残りの精製水を入れて完成。
500ml容器だと溢れそうになりますが、こぼれない目一杯まで入れてOKです。大抵の500mlペットボトルなら、水と粉末が全部入っちゃうと思います。
初めから水500mlで溶かそうとすると攪拌しづらいので、8分目程度の水で溶かしちゃうのがコツ。
また、炭酸カリウムと水が反応すると容器内の圧が上がるので、一度キャップを緩めて圧を逃がしてあげる意味もあります。
圧が上がったまま放置すると、発熱と相まって容器が変形することも稀にあります。

ちなみに、チャーム通販の50gパック(WaterPlantsWorldオリジナル)を買うと、付属の取扱説明書にも作り方が書いてあります。
炭酸カリウム水溶液は取扱注意
自作した炭酸カリウム水溶液はpH10以上の強アルカリですから、取り扱いに注意しましょう。
くれぐれも目に入ったりしないように。皮膚に付いたらすぐ水で洗い流しましょう。そのまま放置すると、火傷のように肌がただれます(化学熱傷)。
子供の手が届かない場所で管理しましょう。
ちなみに作るのが面倒という方には、こういった商品もあります。
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マーフィード「トロフィカルK+」もカリウム液肥です。
使い方は自作液肥と同じです。
自作カリウム液肥の使い方
ということで、自作カリウム液肥の使い方です。ここからが重要なところ。
水草の肥料添加について情報を探すと、「カリウムが一番不足するので意識的に添加しましょう」とどこでも紹介しています。
確かにカリウムが不足しやすいのは本当ですが、だからと言ってドバドバ添加して良い訳ではありません。
特にカリウム過剰は、マグネシウムやカルシウムといったその他必須ミネラルと拮抗して、吸収を阻害してしまう性質があります。
そしてこの過添加状態に陥ってる方、かなり多いです。
カリウムが枯渇してる水槽に添加すると分かりやすく水草の調子が上がりしますから、思わずどんどん添加してしまう気持ちもよく分かるんです。
ですが、そのまま添加し続けて過剰になると、今度は新芽が小さくなって成長が止まったり、葉が異形にねじれたり、下葉が黄色くなる等の症状が現れ始めます。
いくら要求量の多い栄養素であっても、適量が大切。足りなくても駄目だけど、多すぎても駄目ということですね。
また炭酸カリウム過多は水槽pHや硬度を上げてしまうので、入れ過ぎれば熱帯魚や特にヌマエビへの悪影響も多大ですから。
各水草水槽に合わせたカリウム添加量の見定め
水草水槽と一口に言っても水草の種類や量、CO2や照明性能によってカリウムの消費量は全く違います。
そこで各水槽に合わせたカリウムの適量を探りつつ、添加していくようにしましょう。
目安量は水量10Lに対して0.1〜0.2mlから。
例えば30cm規格水槽(約13L)なら吐出量0.1mlミストスプレーで2プッシュ、30キューブ(約25L)や45cm規格水槽(約30L)ならミストスプレーで4〜5プッシュといった感じ。60cm水槽(約60L)で1.0mlくらい。
もちろん入ってる水草が少ない場合は、さらに加減して少なめに添加してみてください。
そして数日様子を見てみて、一時的に調子が改善してまた葉色が落ちてきたタイミングで次の添加という具合に、水草の調子を観察しながら添加量を調整します。
一般的には10%炭酸カリウム液肥は、水量20Lに対して毎日1.0ml添加と言われますが、成長の早い陽性水草が相当量入った水槽以外、過剰添加と考えて良いです。
また、余剰分によるpH上昇も、顕著に現れます。
カリウム不足で現れる葉の症状
カリウム不足の症状は主に下葉に現れます。
葉先から透けるように白化して、進行するとボロボロと穴になる感じ。

この写真の右下葉のように、白く透けるように変化するのが典型的なカリウム不足です。これは有茎草でも同じ。
カリウムが足りなくなると植物は、下葉に保持していたカリウムを最も栄養が必要な成長点(新芽)に移動させて、成長しようとするんですね。
カリウムは主に浸透圧調整や細胞内のpH調整に使われますから、カリウムを失った下葉の細胞は調整できずに崩れて透けてくことが多いです。
こんな症状が出てる株があったら、カリウムが上手く吸収できてないって判断できます。
逆にカリウムが補給されて勢いが蘇ると、新芽がみずみずしく鮮やかな黄緑色になって出てきます。淡いけど細胞一つ一つがしっかりしてるイメージというか、目に見えて効いているのが分かります。
具体的な添加例
肥料加減を覚えるには、実際に添加して水草の変化を見ながら身に付けていくしか方法はないのですが、参考までに私の水槽での具体的な添加例も記載しておきます。
30cm規格水槽の水草

例えばこの30cm規格水槽。
ブリクサ・ショートリーフ、アフリカンチェーンソード、ウォーターフェザー、キューバパールグラスといった水草が育つこの水槽には、自作カリウム液肥1プッシュ(0.1ml)を1日1回添加しています。
ソイルは水草一番サンドで初期カリウム栄養は豊富でしたが、水槽立ち上げから約5ヶ月経っており、ソイルのカリウムが枯渇し始めてからの添加です。
生体はヤマトヌマエビ3匹のみなので、底床には窒素・リンを含む固形肥「カミハタ睡蓮用スティック」をカットして埋めています。
まだ水草量も少ないですし、固形肥料からのカリウムもありますから、液肥はこのくらいで十分。
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水槽pHは6以下なので、カリウム液肥の強アルカリはたとえ1プッシュでもヤマトヌマエビが嫌がる仕草を少し見せます。
30cmキューブ水草水槽

大きめのブリクサとエキノドルス・ベスビウス、ニューラージパールグラス、クリプトコリネ・パルヴァなどが育つこの30cmキューブ水槽には、2〜3日に1回程度ミストスプレーを5プッシュ(0.5ml)添加しています。
手前のニューラージパールグラス育成中の底床には「カミハタ睡蓮用スティック」と、カリウム主体の総合固形肥料「テトラ・イニシャルスティック」も少なめに埋めています。
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やはり固形肥のカリウムもありますから、カリウム不足の症状を見ながら量を見極めていきます。
このように水槽環境は千差万別ですから、一概に水量だけで添加量は決められません。
そのため、ごく少ない目安量から調整していくのが基本です。
固形肥とカリウム液肥がコツ
カリウム液肥の添加例でも記載してますが、液肥のみでなくカリウムや微量元素を含む固形肥料もソイルに埋めています。これが施肥のコツ。
水草育成を液肥のみで管理しようとすると、必ず底床内の栄養が低下します。
根からの栄養吸収メインの水草には死活問題ですし、実はソイル内のバクテリアにとってもカリウムや微量元素は必要で、底床環境を良くするために必要不可欠なんです。
さらに固形肥は自作カリウム液肥ほどpHに影響しませんし、忘れがちな必須微量元素もじわじわと供給してくれます。
総合固形肥料も控えめに仕込んでおくと、栄養バランスがとても調整しやすくなるんですね。
ちなみに真新しいソイルにもカリウムを始め微量元素も含有してますから、水槽立ち上げ初期は液肥だけでなく固形肥さえ要らないことも多いです。
(ただしこれはソイルブランドによって違います。)
常に考えたいのは、肥料にしろソイルにしろ餌にしろ、水槽内の栄養バランスを考えながら管理することです。
生体過密な水草水槽にはちょっと多めに
水槽サイズに対して熱帯魚の数が過密な水草水槽では、カリウム液肥の添加量をちょっと多めにしましょう。
魚の排泄物が多いと、排泄物からの窒素分やリン酸量も過剰気味になります。そして余剰の窒素やリン酸が増えると、カリウム吸収を阻害する作用が出始めます。
なのでその分、カリウムを強めにしてあげます。
もちろんカリウム不足の症状を見つつ調整が基本で、入れ過ぎは禁物。気持ち多めくらいの感覚で施肥してみて、丁度良い加減を探しましょう。
生体数が過密かどうかの基準は、以下の記事もご覧ください。

⇒「水槽サイズ別で飼える魚は何匹?その基準は?」こちら
鉄分も時々添加が吉
カリウム肥料は水草の鉄分吸収を促進する作用があるので、ときどき鉄分も補給してあげると水草の調子もグンと上がったりします。
ただし鉄分もやり過ぎ注意。
もちろん不足すれば困りますが、ソイルにも鉄分は豊富に含まれてますし、固形肥を使えばその微量元素からも供給されています。
鉄ミネラルが過剰になると、リン酸とくっついてリン酸鉄という生体にも水草にも有害な成分として、蓄積してしまう悪影響もあります。
なので、水槽の水草全体の色味が薄くなったかなというタイミングで、1滴〜と少なめに与える程度が十分な適量だったりします。
鉄液について詳しくは、以下のページもご覧ください。

⇒「水草の鉄分供給と鉄液肥の使い方」こちら
ちなみに私は鉄分液肥に「Fe Energyアクア濃縮タイプ」を使ってますが、赤系水草の葉色を目安に忘れた頃に少し垂らす程度なので、容量20mlながらかなり保ちます。
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水草が吸収しやすい二価鉄水溶液を濃縮した商品です。
他商品として、大きい水槽には「メネデール」も鉄分供給に有名です。
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アルカリpH水槽に炭酸カリウムは難しい
最後に、水槽水pHがアルカリ性に傾いた水槽には、炭酸カリウム水溶液はおすすめしません。
例えば底床に大磯砂やサンドを使った水槽が多いでしょう。
pHが高い水槽では、水草がうまく育たなくなります。
また、ただでさえ高pHな水槽に強アルカリの炭酸カリウムだと、特に生体へのダメージも無視できません。
中性(pH7)前後ならまだ良いですが、7.5くらいから上の環境にはできるだけ固形肥のみでのカリウム供給がおすすめです。
もしくは、pHやKHに影響を与えないカリウム液肥もあります。

ADA「グリーンブライティ・ニュートラルK」はpHやKHを上昇させないので、弱酸性水質を維持しやすいカリウム液肥です。
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自作カリウム液肥と使い方まとめ
自分で作るカリウム液肥と、カリウム液の使い方について、ご紹介しました。
水草肥料の中でも特にカリウム液は頻繁に使うので、常に置いておきたい液肥です。
それと同時に水質にも強く影響しますから、適量加減を知ることは美しい水草水槽を維持・管理する上で不可欠でしょう。
とは言え水草が欲する栄養素は、カリウムだけではありません。その他栄養素とのバランスも、とても大切になってきます。
他の水草栄養についても書いていますので、以下ページもよろしければご覧ください。
総合固形肥料や水草栄養の基本については、こちらをご覧ください。

⇒「水草水槽に肥料を与えるやり方と考え方」こちら
関連記事

⇒「水草の窒素不足に尿素水を自作する方法と使い方」こちら

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