水草育成とCO2添加について
植物が成長する上で、光、各種栄養素、酸素、そしてCO2(二酸化炭素)が必要不可欠です。
CO2と水と光エネルギーを使って光合成を行い、ショ糖やデンプンといった炭水化物を合成します。
これはもちろん、水中で育つ水草も同じ。
ですが水中の場合、陸上のようにいつでも充分なCO2を得られる環境とは限りません。水草の成長は、水に溶け込むCO2量によって大きく左右されます。
水槽のように隔離された環境では水草同士がCO2を奪い合い、枯渇する状況もあります。
このページではCO2添加する考え方や本質、適正量など、水草を元気に育てるためのCO2添加についての基本をご紹介しています。
CO2濃度や化学式など少し難しい内容も出てきますが、水草とCO2の関係についてすべて網羅してると思います。
何度も読み返していただければ嬉しいです。
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水草育成にCO2添加は絶対必要?
「水草育成にCO2添加は必要か?」
水草水槽を始める方が、一度は考えるところでしょう。
で、答えは、絶対ではありません。CO2無添加でも育つ水草があります。
水草種によってCO2添加が必要かどうか変わってきます。
例えば以下のビーシュリンプ水槽写真。
こちらは24時間エアーレーションを行い、CO2添加していない水草水槽です。
水草種は、ミクロソリウムsp.スモールリーフ、ブセファランドラ・グリーンウェービー、ブセファランドラ・ラマンダウ、アヌビアス・ナナプチ、南米ウィローモス、ウォーターフェザー、フレイムモス、マツモ、ロタラ・マクランドラ。
ほとんどの水草が、陰性水草とモス類ですね。
これら耐陰性のある水草種は強い光を必要とせずグイグイ光合成をするわけではありませんからCO2消費量も少なく、強制添加しなくても育てることができます。
CO2添加が要らなくても育つ水草は、ここに挙げたアヌビアス系やブセファランドラ系、ミクロソリウム系の他にも、クリプトコリネ系やエキノドルス系、ハイグロフィラ系の一部、ボルビディスなども有名です。
ちなみにこれはCO2添加が無くても育つということであり、CO2が水草成長に不要という意味では当然ありません。
泳ぐ魚の出すCO2や、水草の呼吸から出るCO2、水面から自然に溶け込むCO2等を利用すれば、育つことができるということです。
陽性水草にもCO2無添加で育つ種がある
陰性水草と対照的に成長が早く栄養消費が多い“陽性水草”は、基本的にCO2添加必須と言われる種が多いです。
ですがそんな陽性水草の中にも、CO2添加せずに育成可能な種はあります。
ロタラ・ロトンディフォリアやヘアーグラスショートは、CO2が無くても育つ水草として、認知度は高いかもしれません。
ギザギザした個性的な葉姿が人気のハイグロフィラ・ピンナティフィダもCO2無しで育つ種。
ただ無添加にする場合は、ソイル底床でpHを抑えてあげると上手く育ちます。
実は、このpHを抑えるという事が、CO2添加の必要性と大きく関係してくるんです。
ここから、私が体感しているCO2添加の意味について触れていきます。
光量や水質でCO2添加依存度は変わる
同じ水草種でも、光量(照明性能)や水質の違いによって、CO2無添加で育つ場合と育たない場合の差が生じます。
CO2添加が必要と言われる水草種であっても、光量や水質によっては無添加でも育つ環境があるんです。
光量が強すぎると光合成は阻害される
植物が光合成を行う上で、光は不可欠です。光が無ければ光合成はできません。
ですが逆に、光エネルギーが強過ぎても植物は対処しきれず、草体内に活性酸素を生成し始めます。
活性酸素は葉緑体を傷付け、光合成が阻害されます(光阻害)。
そしてこの光阻害は、光に対して使えるCO2が少ない場合でも起こります(CO2律速)。光量に見合ったCO2が存在しなければ光合成速度が低下して、活性酸素が生成されるんですね。
照明器具は一般的に、光量の強い商品がオススメされる傾向にありますけど、明るい光にはそれだけしっかりとCO2量、つまりCO2添加が必要になります。
光量とCO2が多いと制約も多い
私はよく“環境に合った適度な照明”なんて勧め方をしますが、その理由に、光量とCO2が多いと「コケが出やすくなる」事があります。
光量が強ければその分CO2も増やさないと、光阻害が起こります。ですが光量もCO2も多いと、格段にコケも育ててしまいます。
そのために、照明時間を短くする等の対策をするんですね。
我が家では、どの水槽も12時間点灯してますが、これは照明の強さがほどほどだからです。
明確な基準があるわけじゃないので、“ほどほど”なんてとても曖昧な表現になっちゃいますが、育てる水草に対して明る過ぎず暗過ぎず適度な加減の光量。
できるだけ長く水槽を眺めていたいですし、6時間とか7時間しか照明が点けられない照明性能って、光量が強過ぎかなと思います。
あ、もちろん12時間照明が長過ぎる事はありません。
日本平均でも夏季なら日出から日没まで14時間以上ですし、水草の原産地である熱帯アマゾンや東南アジアなど温帯地域でも、日照時間は年間通して1日13時間以上って場所がほとんどです。
pHが低いとCO2添加は少なくて済む
光量や栄養素など他要因は問題ないという前提ですが、飼育水pHが低ければCO2添加量は少なくて済みます。
実はpH5.0〜5.9の水質なら、陰性だけでなく多くの陽性水草もCO2無添加で育つようになります。
こう聞いてピンッと来る方は、pHとKHとCO2の相関関係をご存知の方でしょう。
pHとKHが分かれば溶存CO2量が分かる相関関係
飼育水のpHとKH(アルカリ度)が分かれば、溶け込んでいるCO2量が分かります。
これがpHとKHの相関関係です。
なぜpHとKHから溶存CO2量が分かるかというと、アクアリウムで使用されているKH試薬が炭酸水素イオンHCO3-(重炭酸イオンとも言う)の量、つまり「アルカリ度」を計測してることが挙げられます。
KHは本来、炭酸塩硬度のこと
KHは本来、炭酸塩硬度のこと。アルカリ度とは別物です。
炭酸塩硬度とは、炭酸水素イオンと対になるカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の総量を計測したものです。
ですがCa2+やMg2+は、炭酸水素イオンの他にも硫酸イオンやリン酸イオン等と対になるものも存在するため、計測が複雑です。
そこでアクアリウムでは逆に、対の炭酸水素イオンHCO3-の方を計測して、炭酸塩硬度の近似値を出しているんですね。
[KHアルカリ度試薬は酸を添加してHCO3-を水と二酸化炭素に変化させて計測。]
- HCO3- + H+ ⇔ CO2 + H2O
近似値というのは、例えば炭酸水素ナトリウムなど関係ない分も余分に計上しちゃうからです。
でもこの炭酸水素イオン(HCO3-)をすべて計測していることで、CO2量が分かるんです。
pHによって溶存CO2が変化
水は、溶け込む二酸化炭素の量によってpHが大きく影響を受けます。特に淡水pHは、溶存CO2量に支配されます。
そして、水に溶け込んだCO2はpHによって変化します。
- CO2 + H20 ⇔ H2CO3
- H2CO3 ⇔ HCO3- + H+
- HCO3- ⇔ CO32- + H+
CO2は炭酸物質ですが、水溶液中には水和した遊離炭酸CO2(aq)の他に、炭酸水素イオンHCO3-、炭酸イオンCO32-、炭酸H2CO3(aq)の4種類あります。
ここまでまとめると、水に溶けたCO2はpHを変化させながら、安定するまでこれら炭酸物質に変化していくんです。
で、ここからが肝。
これら炭酸物質は水温とpHによって存在割合が決まっています。
つまり、水温が一定かつpHが分かれば、1つの数値を基準としてそれぞれの炭酸物質量(濃度)が分かる訳です。
そしてこの中の炭酸水素イオンHCO3-が、KH試薬で計測しているアルカリ度ですね。
なので、pHとKH(アルカリ度)が分かればCO2量が分かるんです。
ちなみにpHとKH(アルカリ度)の相関表はこちら。
(※酸解離定数は電荷が増えると状態量がわずかに変化するようですが、CO2濃度二桁数までの実用的な数値にあまり差が出ないので、25℃時の炭酸飽和の平衡定数と1段目酸解離定数をそのまま使って計算しています)
この表のCO2量って、基本的に遊離炭酸CO2(aq)の量(わずかH2CO3(aq)含む)ですね。
光合成はCO2を使う
光合成ではCO2を使います。
つまり水中の水草では、遊離炭酸CO2(aq)。そのため遊離炭酸を求める相関表なんです。
とはいえHCO3-が全く使えないのではなく、葉緑体の炭酸脱水酵素によってCO2(aq)に変換され、利用される事もあります。
ただし、このHCO3-の利用は水草種によって得手不得手があり、低pHを好む種はHCO3-が苦手と考えられています。
南米産水草のように元々の生息地(原産地)がかなり低pHでHCO3-のほぼ無い環境に進化・順応してきた種は、苦手なのも当然かもしれません。
CO2添加の適正量は?
先に書いた通り、CO2添加の適正量は光量によって増減します。
光量が強ければよりCO2濃度を高くする必要がありますし、ほどほどの光量であればCO2濃度もほどほどで十分という意味です。
また水草によっても個々にCO2消費の少ない種もあれば、高濃度を好む種もあります。
pH・KH相関表を見ながらCO2濃度を確認し、15mg/l程度から様子を見ると良いでしょう。
南米系水草などは低pH高CO2で調子を上げやすいですし、照明が強いと30mg/l以上添加しないと調子が上がらない場合もあります。
もちろん15mg/l以上無ければ駄目という意味ではありません。
水草種と環境によって、それ以下でも全然事足りる状況が当然あります。
CO2過添加の見極め
CO2量が過剰かどうか、私は以下の基準で見極めています。
40mg/lを超えない
CO2濃度が40mg/lを超えないようにしています。
ちなみに、Tetra社(テトラ)溶存二酸化炭素試薬(販売終了品)では、“20mg/lを超えると魚に有害”と説明されています。
これは濃度30〜50mg/lになると魚の動きが鈍くなり50mg/l以上になると触っても逃げなくなる、高濃度が長時間続いたり150mg/lになると“へい死”(中毒死)する等、二酸化炭素中毒の症状が起こるためです。
ただし40mg/l程度までなら、長時間続かなければ熱帯魚やエビに問題になることはないと思います。
また試薬の計測誤差によって、誤って40〜60mg/lの数値が出てしまう事もあるでしょう。特にpH試薬のように色の階調を識別するタイプは、感覚に個人差が出ますから。
実は水草自体はCO2がかなり高濃度でも成長できますけど、どんな水草でも30mg/lを超えてからは、それ以上の良い変化はほぼ感じられないと思います。
生体を危険に近づける高濃度な環境ってだけでなく、ボンベを無駄に消費するのも勿体ないですよね。
ということで、増やしても40mg/l未満で調整なら魚やエビに問題なくCO2添加できる基準としています。と言っても私は、入れても20mg/l、大抵10〜15mg/l程度ですけども。
発酵式CO2添加30cm水槽を計測
発酵式CO2を添加する30cm規格水槽を2通りの方法で計測してみました。
pH試薬とKH試薬を計測してpH/KH相関表で確認と、もう1つはTetra溶存二酸化炭素試薬で計測、2パターンを比較しました。
溶存二酸化炭素試薬では、9滴で18mg/l。
テトラpH試薬とKH試薬ではそれぞれpH6.6、KH2となり、前出の相関表から濃度19mg/l。
結構な差が出るかもなんて思ってましたが、結果はかなり近似値でした。
ただ、KH試薬は青(寒色)から黄色(暖色)にはっきり変わるので誤差は少ないと思うんですが、pH試薬の6.6って思いっきりフィーリングです、「6.5より少し緑色寄りかな〜」っていう(爆)
もしpHを6.5と読んでいたら濃度は相関表より23mg/l、6.7だったら15mg/lと、差が出ますよということです。
低pHになるほど違いも大きくなるので、それを知ってる上で計測するのが良いかなと思います。
ちなみに、テトラ6in1試験紙みたいなすべて色階調で判断するものは個人差が大きいので、pH/KH表に使うのは止めた方が無難かもです。
有茎草の間延び
ロタラ類やルドウィジア類など有茎草の茎の間延びも、CO2過添加の目安です。
と言っても、どのくらいから間延びなのか基準は無いですけども。「なんか不恰好に茎が伸びてる」と感じたら、CO2を少し抑えてみます。
ちなみにこれは、“光量に対してCO2過剰添加”の目安と考えましょう。
つまり、間延びしても光量を増やせば(光を強くすれば)、間延びが治まるからです。
ただし光量バランスを変えれば、照明時間にも影響してきますね。
細かいことを言えば、水草種ごとの光量の許容範囲なんかにも影響します。“陰性水草には強過ぎる”とか。
とにかくCO2添加してみる
とにかくCO2を添加してみましょう。
実際にやってみると簡単に理解できる事、多いと思います。
ちなみに、小型汎用ボンベやミドボンなどの高圧ボンベ式CO2添加に必要な各パーツについては、以下ページをご覧ください。
重曹とクエン酸を用いた化学式CO2添加装置も有ります。
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初めて器具を設置・CO2添加する方は、休日など1日様子を確認できる日がおすすめです。
チューブ配管の長さによりますが、スピコン調整してから気泡の放出が安定するまで10分ほど掛かることもありますから、過剰添加で熱帯魚が死んでしまう等の失敗が無いよう、気泡の出方の様子を何度か確認しましょう。
それと、pHとKH(アルカリ度)が計測できる道具は、初めから用意したいところです。
CO2の加減が分かるまでは、ちょこちょこ計測した方が断然理解は早いです。
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これらpH計測商品の良いところは安価な点はもちろん、仕組み上も商品ごとの性能差がほぼ無いこと。
人によって若干の色の読み違いはあっても、色の出方(反応具合)に大きな差はないです。
昨今は安いpHメーターが多く出回ってますけど、爆安pHメーターは正直信用できない品質の物があります。。
またpHメーターは、イオン数による微弱な電気の差を水温も加味して読み取る仕組みなので、特にpH6前後から下の低pH軟水は計測誤差が大きく顕著です。
もちろんどんなpHメーターも正確性を期すには定期的に校正液調整が必要ですし、そういった点でも、これらは簡単かつ十分に使える商品です。
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水道水KHは全国的に2〜3程度の地域が多いですが、場所によってはKH4〜6なんて事もあります。
また、水換え頻度が少ない水槽だと、KHが1未満なんて事もよくあります。
KHが1違うだけでCO2濃度は変わってきますから、具体的に知りたい方は是非一度使ってみるのがおすすめです。
ちなみに色々と添加の加減を書いてますけど、水草水槽の経験が少ないうちは具体的な加減を理解するのも難しいはずです。
水草の成長はCO2の加減だけで決まるものではありませんから。
加減がよく分からない時ほど添加量をコロコロと変えず、相関表を見ながら例えば約15mg/lで一定に安定するよう調整し続けてみると良いです。
淡水水槽はCO2(aq)とHCO3-の関係だけ見れば良い
淡水水槽は広く見てもpH5前後からpH8程度までがほとんどですが、このpH範囲では炭酸イオンCO32-や炭酸H2CO3(aq)の割合がほぼ無いので、遊離炭酸CO2(aq)と炭酸水素イオンHCO3-の関係だけに省略しています。
ちなみに遊離炭酸CO2(aq)と炭酸水素イオンHCO3-のイオン積が等しくなるのは、水温25℃でpH6.35(図pK1)です。
私の水槽はみな水温26℃設定なので、だいたいpH6.34辺りで半分という説明をしています。
pH6.37で半分なんて言われたりもしますけど、要は、水温の違いでイオン積も変わるって事です。
CO2添加はpHを下げる効果が重要
CO2添加は、pHを下げる効果がとても重要です。
誤解を恐れずに言ってしまうと、pHを目安に添加量を調節すれば、問題なく管理できてしまいます。
栄養系ソイル初期はCO2添加を控えめに
ソイル使用初期は、少ない添加量で簡単にpHが下がります。栄養系ソイルはCO2添加しなくてもpH6を下回る場合も多いです。
正直なところ、水草育成にはpH5.0〜5.9の範囲がとても有効です。このpHであればどんな水草も育成がかなり簡単になります。
この低pHで注意すべきは、高pHを好む熱帯魚がいる場合と、これ以上pHを下げないようにする点ですね。
これ以上低下するとバクテリアや微生物の活性がガクッと落ちる事、そしてモリブデンを筆頭に栄養素の吸収に支障が出て来ます。
pH調整をCO2添加だけに頼らない
水草育成にpH5.0〜5.9は有効と書きましたが、pH調整能力が低下したソイルや大磯砂底床の水槽を、CO2添加の力だけでpH6より下げるのは、大抵CO2過剰となるはずです。
こんな時は、底床に窒素・リン含む固形肥料を少しずつ施肥しましょう。
CO2添加のみよりも、グンッとpHが下がりやすくなります。
ミネラルによる底床バクテリアの活性化を始め、リン酸の溶出、アンモニウム硝化によるプロトン増加といった作用が、pH降下を促進します。
pH6以下がCO2濃度充分なのはpH・KH相関表を見ても分かると思いますが、各種栄養素がバランス良くあることも水草の成長に不可欠ですね。
CO2添加してなくてもCO2はある
CO2を強制添加してなくても、飼育水中にCO2は存在します。
pHとKHから溶存CO2量が分かりますが、強制添加していなくても計算上CO2濃度がある状況って結構あります。
この時、溶存CO2は確かに存在します。
「添加してないから実際はCO2が無いのでは?」なんて思うかもしれませんが、そんな事はありません。相関表のCO2量は、pHとアルカリ度HCO3-濃度から科学的に計算された数値です。
ただし強制添加してなければ、光合成によるCO2の減少は目に見えて分かります。
水草の吸収でCO2濃度がどんどん低下していき、pHは上がっていくんですね。計算上でもCO2が減っていくわけです。もちろん、存在する水草量によりますけども。
例えば屋外にある溜池でも、昼間は水草や植物プランクトンがCO2をどんどん消費してpHが上昇し、夜間は全ての生物が呼吸のみとなりCO2が蓄積してpHが下がる。こんなpH変動は、自然環境でもごく日常的に存在しています。
CO2が自然発生する要素
ちなみに、水槽内でCO2が自然発生する要素は、以下のようなものがあります。
生物の呼吸
魚やエビや水草、目に見えない微生物まで、生物は呼吸をして二酸化炭素を吐き出します。
腐植物質がしっかりある栄養豊富なソイルでは微生物の活性も高く、CO2の蓄積が多くなります。
夜間エアレーションしない水槽では朝方のCO2濃度が最も高くなりますが、これは水草含む全ての生物が夜間に呼吸し続けるからですね。
水面から溶け込むCO2
大気中のCO2濃度は約0.04%ですが、水槽中のCO2濃度も大気と釣り合おうとして、ゆっくり自然にCO2が水面から平衡移動します。
水槽に溶存するCO2が減れば水面から溶け込みます。
逆に、溶存CO2量が増えれば、徐々に大気中に放出されます。
エアレーションなど水面を揺らして曝気することで、大気との平衡移動は促進されます。
水温とCO2濃度の関係
水温が低いほどCO2は水に溶け込みやすくなります。もちろん水が凍ってしまう0℃までの話です。
空気中の二酸化炭素が水面から溶け込む量は、水温が低い方が物理的に有利です。
ですが例えば、水温10℃の池と水温25℃の池では、朝方のCO2濃度は水温25℃の方が高くなります。
これは水温25℃の方が生物の活性が高く、呼吸量が圧倒的に多いからです。
つまり何が言いたいかというと、生物の呼吸って馬鹿にできないくらいCO2を増やすんです。特に栄養豊富なソイルに繁殖する微生物は、pHにも影響するくらい呼気を吐き出します。
炭酸塩ミネラルの添加
炭酸カリウムや炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど炭酸塩ミネラルの添加は、最終的にCO2の増加に繋がります。
炭酸イオンCO32-は水素イオンH+と結び付き、炭酸水素イオンHCO3-になります。
- CO32- + H+ ⇔ HCO3-
HCO3-は、pHが下がれば遊離炭酸CO2(aq)に変化する物質ですね。
ただし炭酸塩はプロトンを減らすのでpH上昇しますし、カルシウム・マグネシウムが増えればGH(総硬度)も上がりますから、CO2を増やすために入れるものでは無いですね。
水草が必要とする分だけ入れるのが、好ましいです。
呼吸や光合成のCO2の意味
呼吸や光合成の説明となるとCO2が出てきますけど、突っ込んだ話、そのCO2は何のために使われてるとか、何から何に変わってるとか、本質を考えると分かってくる事は多いと思います。
ただ「呼気でCO2を排出」とか「光合成にCO2を使う」ってだけじゃなく。
例えば、光合成でCO2を吸収しますけど、植物が使いたいのは二酸化炭素というより炭素(C)です。
思いっきり省略して言うと、要は光合成はCO2のCを使って栄養を蓄え、残ったO2を吐き出します。
炭素固定、つまり炭素の流れですね。
これは呼吸でも同じで、呼気CO2の炭素は、炭水化物なんかを燃やしてその炭素を出してるわけです。
そう考えると、CO2添加は炭素Cを供給するためにしてるってことになりますね。
炭素原子はどこにある?
じゃあ、CO2添加以外で水槽内に炭素Cがどこにあるか考えてみると、魚の餌や排泄物、そしてソイルの腐植酸とかの有機物です。
このことからバクテリアの呼気に含まれる炭素Cは、これら有機物の分解から得たものだと分かります。
ここから分かるのは、こういった有機物が少なければバクテリアは繁殖せず、当然呼吸量も減少します。
しいては水草が欲する炭素Cを、CO2添加に求める比重が増すということですね。
逆に考えれば、栄養豊富なソイルはバクテリア繁殖を促して、CO2濃度をあげてくれます。
腐植酸やミネラルを豊富に含んだソイル、そしてバクテリアの繁殖する底床が、なぜ水草を元気に育てるか。その理由の1つに繋がっていきますよね。
発酵式CO2や自然溶解式添加筒
発酵式CO2や自然溶解式の添加筒を使ったCO2添加でも、添加の効果を享受できます。
全く添加しない水槽に比べたら“月とスッポン”。育つ葉姿には雲泥の差があります。
ただし発酵式は添加量を調整することが出来ませんし、どちらもボンベ式に比べて添加できる最大量は少ないです。
(これは大型水槽ほどデメリットになります)
そこで、発酵式や添加筒におすすめのポイントです。
ソイル栄養で低pHを維持
それなりの栄養系ソイルを使い、低pHを維持しつつバクテリア活性の高い底床を作りましょう。
リン酸や腐植酸、硝化作用によってpHを低く抑えてくれますし、バクテリアの呼吸がCO2濃度をサポートしてくれます。
適度な光量の照明
発酵式や自然溶解式は光量に合わせてCO2を増やすことが難しいですから、過度な明るさにならないように適度な光量の照明を選びましょう。
照明選びについては、こちらの記事もご覧ください。
⇒「水草水槽におすすめ照明は?LED照明の選び方」こちら
添加効率を高める設置
強い水流にCO2気泡が乗るように、ストーンや添加筒の設置場所を工夫しましょう。
たかが設置位置と思うかもしれませんが、しっかり水流に乗せると添加効率は格段に良くなります。
また発酵式CO2の場合は、ストーンの気泡の細かさも大きいです。
こちらの記事に詳しく書いています。
水面をバシャバシャ曝気させない
CO2添加時は水面をバシャバシャさせないようにします。
水面を攪拌することで、CO2が大気へ逃げてしまう曝気を促進してしまいます。
CO2添加中のエアレーションは厳禁です。
リン含む固形肥料の施肥
ソイルの効果が弱まってpHが上がってきたら、リン含む固形肥料を埋め込むとまたpHがグッと下がります。
発酵式だと、初期ソイル以外の環境では下がってもpH6.5〜6.7程度という事もありますけど、この水質でも大概の水草種を育てることができます。
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CO2要求度の低い水草でレイアウトする
そもそもCO2要求度の低い水草を選んでレイアウトするのも、1つの選択肢でしょう。
どんな水草も種それぞれに違う美しさがあり、それを引き出す楽しみもまたアクアリウムの醍醐味です。
CO2無添加で育つ水草であっても、少し添加するだけでより生き生きと鮮やかに変わるんですよね。
水草育成とCO2添加まとめ
ということで、CO2添加の考え方や適正量など根本的な部分について書いてみました。
水草育成の経験が少ない方にはちょっと小難しい内容かもしれませんが、CO2添加するのであれば、知っておいて損はない内容と思います。
ちなみに冒頭のビーシュリンプ水槽ですが、CO2無添加とはいえ“水質とCO2の理屈”を応用した管理をしています。
例えばまず、低pHを維持して、エアレーションしながらもCO2(aq)濃度を高めています。
現在pH5.9ほど。
いくら強制添加が必須でない陰性水草であっても、低pHで割合の増えるCO2(aq)をやはり喜んで吸収します。
遊離炭酸は光合成に断然使いやすいですからね。
そして光は強過ぎないように、スタンド用照明のみ。
光量が多いと、その分CO2も各種栄養素もたくさん必要になります。
繊細なビーシュリンプはカリウム濃度や窒素分の許容量が少なく、肥料で濃度が上がると体調を崩してしまうんですね。
つまりビーシュリンプが繁殖できる水質を維持しつつ、光量と各種栄養素、そしてCO2のバランスを整えてあげるわけです。
この環境では陰性水草が生き生きとするだけでなく、ロタラインレーやマクランドラのような陽性水草も成長しています。
ただしもし「光を強くした方が水草が育つ!」なんて光量をグンと増やすと、すべてのバランスが崩れて、ビーも水草も一緒にうまく育つ環境では無くなるんです。
すべては“バランス”ですね。
ちなみに、pHを下げるためにpH降下剤等は使いません。
商品によってKHも下げちゃいますし、何よりビーシュリンプが少なからずダメージ受けますから。
ビーシュリンプと水草育成について詳しくは、以下のページに書いています。
水草育成の基本と環境バランスについて、こんな記事も書いています。
⇒「水草育成の基本は照明と栄養と水質水温」こちら
もちろん、栄養素のバランスも大切です。
水草の栄養についてはこちらの記事をご覧ください。
⇒「水草水槽に肥料を与えるやり方と考え方」こちら
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