水草の窒素不足に尿素水の自作方法と使い方
水草水槽において、カリウムやその他微量元素など各種栄養素が肥料で充分足りてる筈なのに、水草が上手く育たないことがあります。
葉が茶色くなりひょろひょろと抜けてしまったり、溶けて枯れてしまったり。。
照明光量も充分でCO2添加していてもこういった事が起こる場合、窒素不足の可能性があります。
窒素分は水草の葉や根を丈夫にぐんぐん育てて根張りを良くし、水草成長の土台を作るとても大切な栄養素です。
その他栄養素が満たされていても、3大栄養素の一つである窒素が足りないだけで、水草は上手く育ってくれません。
そこで窒素分を補うため、尿素水の自作方法と使い方について書いてみます。ご参考下さい。
尿素水はアンモニアを添加するようなもの
尿素は窒素分を含むものですが、一般的な水槽では魚やエビの排泄物(糞とアンモニア)から、窒素は充分に足りるものです。
「有害なアンモニアがバクテリアに分解されて、比較的無害な硝酸塩が残る」というアレです。
ですが、ソイル以外の窒素分を含まない底床材を使っていたり、低栄養なソイルと生体が少ない環境の組み合わせ(人工餌が少ない)、生体に比べて水草量が格段に多い水槽(窒素分の消費が激しい)、特に立ち上げて数ヶ月の初期に窒素が足りなくなる事が多いです。
(生体数や餌の量が少なければ飼育水は汚れないが、水草が欲する窒素分をソイルや肥料で考える必要がある。)
そこで尿素水なのですが、尿素はどんどん分解されてアンモニアに変わるので、要はアンモニアを添加してるようなものですから、調合する濃度や使用法には充分注意しなければいけません。
水槽立ち上げで有毒なアンモニアをどうやってスムーズにバクテリアに分解させるかという環境づくりが大切な事は、アクアリウム初心者でもご存知のはず。
なので、石橋を叩いて渡るくらい慎重に事を進めていきましょう。
といっても注意点を守れば、それほど難しくはありません。
用意するもの
- 尿素
園芸用の固形尿素粒
- 尿素水容器
簡易の小型水筒や500mlペットボトルでOK
- 底床注入スポイト
化粧用注射器タイプのスポイトが便利
- 尿素粒入れ
尿素粒を入れる密封容器
全部揃えても1000円未満です。
尿素粒はホームセンターの園芸コーナーで1kg数百円、スポイトも100円SHOPダイソーで買える化粧用スポイト(シリンジ)が使いやすいです。
底床に注入だけでなく、添加量を結構正確に量れるんです。
尿素粒を入れる容器は、尿素は湿気でカチカチに固まってしまうので、残りを密封容器に入れるのがおすすめです。
正直なところ1kgも尿素を使い切らないので、もっと少ないサイズがあればいいんですが、まあ安いので良いかという感じ。
ちなみに、薬局で売ってるアンモニア水を希釈しても使えなくはないですが、有毒なアンモニアを直接添加するより比較的無害な尿素から少しずつアンモニアに変わっていく方が、安心で使いやすいと思います。
またアンモニアは揮発性なので、アンモニア水だと徐々に濃度が下がってしまうため、その都度作る方が賢明でしょう。
純粋な窒素肥料はない
園芸用の窒素肥料というと硫安(硫酸アンモニウム)や塩安(塩化アンモニウム)、石灰窒素などがありますが、窒素だけでなく硫黄やカルシウムやナトリウムといった余分な成分も添加してしまうので、単体では固形尿素が安全。
尿素なら、窒素分以外は水素と二酸化炭素ですから。
純粋な窒素だけの肥料ってないんです。なぜなら窒素は通常、気体の窒素分子が最も安定しているので、窒素化合物に変換(これを窒素固定と言う)しないと常温下で液体や固体として扱えないんですね。
まあどちらにしろ水草が窒素を使う際にも、アンモニア態や硝酸態など窒素固定されていないと使えないわけですけども。
話は逸れますが、ちなみに「液体窒素」は純粋な窒素ですが、約マイナス200度まで冷やしたもの。
尿素水の自作手順
自作手順と言っても、作り方はとても簡単です。
尿素粒を1g測り、水250〜300ccに溶かすだけです。
ただ1gは少し慎重に測ります。けっこう簡単に数ミリグラムの誤差が出るので、濃度が濃いと環境に影響が出やすくなります。
これで濃度0.4%以下の尿素水が出来ます。
ちなみに新しいコンパクトデジタルスケールを買ったのですが、これが安いのに精度も十分で良品。
0.1gまで測れて誤動作防止に蓋付き。前は嫁に怒られながらキッチン用を使ってたんですけど、もっと早く買えばよかった。。
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もちろん、カップなど風袋の余分な重さを差し引いて計測できます。美しい水草育成に拘るなら、かなりおすすめ。
尿素水の添加方法
次に、尿素水の添加方法です。
何度も言うようですが、尿素も結局アンモニアに変わります。
アンモニアは生体にとって有害ですから、大量に入れてしまうとコケ増殖や藍藻発生など環境悪化だけでなく、生体の死にも繋がります。
充分注意して行いましょう。
スポイトで底床内に添加がおすすめ
ぜひ守りたいのが、尿素水は底床内の奥深くに注入すること。
そして同じ場所に何度も注入せず、適度にバラけさせながら施肥すること。
1日の添加量
私が得た経験からご紹介します。環境によってはこの限りではないので、初めはごく少量からスタートして様子を見るのがおすすめです。
まず、水槽の総アンモニア濃度が0.25mg/lを超えた状態で長期間維持すると、生体に多大なダメージを与えると言われていますから、尿素ではあるけど安全性を考えて、これを基準にしています。
0.4%の尿素水1ml(1cc)に含まれる尿素は4mgですから、総水量16リットルの水槽で限界値1mlとします。
4 ÷ 0.25 = 16
そして窒素分が足りない状況、つまり硝酸塩が少ない水槽では、アンモニアを分解するバクテリア環境がまだ未熟な可能性が高いので、初めて尿素水を添加する場合は限界値の半分から始めます。
つまり16リットル水槽で0.5mlから。32リットルなら1mlという具合です。ご自分の水槽水量から計算して下さい。
添加と経過観察
初日に一度、目的の水草近辺に添加したら翌日まで様子見です。
もし生体の調子がおかしかったりガラス面に緑ゴケ茶ゴケが一気に増えていたら、追加せずさらにもう一日様子を見ます。
水草の新葉が出てきて、ガラス面のコケ状態もそれほど悪化しないようであれば、2日目も続けて同じ量(限界値の半分)を注入します。
逆に水草の変化もなく生体の調子も崩れてなければ、水量に対する限界値の尿素水を注入して、さらに翌日まで経過を観察します。
3日目でも水草に変化が感じられなければ、窒素欠乏が原因ではない(もしくはその他も欠乏してる)可能性が高くなりますから、そこで添加を中止しましょう。
もし水草の新葉がどんどん展開するようなら、あと数日くらいは限界値の半分量をそのまま添加し続けてみても良いでしょう。
ただし、ガラス面にコケが多量に発生したり、生体に不調が出始めたら即中断します。
窒素欠乏が原因であれば、1日でだいたい変化が現れます。新しい根を伸ばし始めたり、新葉が出始めたり。なので3日経っても変化がない場合は、その他要因が考えられます。
この時、水槽内すべての水草を観察しましょう。もし窒素不足であれば水槽全体に影響しますから、他の水草にも成長の変化が現れます。
調子に乗ってやり過ぎない
いくら効果があっても、水草に使われず余った尿素水は最終的に硝酸塩となって蓄積し出すので、無闇にずっと続けて良いものでもありません。調子に乗ってやり過ぎないように。
余剰分はやはり緑藻コケの栄養となってしまいますし、飼育水の汚れにも直結します。
また窒素が充分に満たされると成長が促進されて、カリウム欠乏の症状が出やすくなります。その場合はカリウム肥も少し一緒に加えると良好です。
例えば、“尿素液の添加初期は調子が上がったけど、また失速した”なんて時ですね。
継続的に添加して水草の調子が改善されたら、添加を一時ストップして、再度同じように水草の葉色が黄ばんだり根が溶け出すなどの症状が出始めたら再開すると良いでしょう。
とはいえ、窒素分が枯渇している水草はその他栄養素の吸収も低下しているので、尿素水添加で成長が加速し始めると、それまで蔓延していたコケが減り始めるのもよくある現象です。
コケに回っていた富栄養が消費されるんですね。
ちなみに私の場合は、窒素不足だと分かったら窒素を含む固形肥を少しずつ埋め込むようにしています。その方が手間も少なく安心ですから。
(カミハタ「スイレン水生植物用スティック肥料」は窒素分を含み、そこそこ即効性。折って差し込むだけで使いやすい。)
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(これもカミハタの水草用固形肥「おこし」。ちょっと埋め込みにくいけど、肥料割合や長期効果はこちらの方が優れてる。)
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窒素とリンの比率関係
窒素分が枯渇する水槽では、リン酸分の枯渇も起こることがあります。
窒素もリンも生体の排泄物から供給される環境は多いですから、魚が少なかったり水草が多ければ、リンも同様に寂しくなるのは当然ですね。
ただし、立ち上げ初期は同じように推移しやすい窒素とリンですが、長期維持する水槽では窒素分に比べてリン酸分の比率が多くなっていきます。これは、硝酸塩(窒素分)に比べてリン酸塩が排出しづらく底床に蓄積しやすいからです。
なので、多少なり人工餌を与え続けてきた水槽でリン酸が足りないという事は少ないのですけど、窒素入り固形肥には通常リン酸も含みますから、既にリン酸比率が高い水槽では黒ヒゲコケ等を助長してしまう可能性もあります。
もう黒ヒゲが発生してる水槽では、定期的に尿素水だけ使う方が理想的な場合もあるでしょう。この辺りは水槽環境に合わせつつ、個々に判断ですね。
また尿素水は、空気中に存在する細菌によって時間経過とともに徐々にアンモニア水に変わっていきます。なので同じ添加方法を守っていても成分が変化して、生体に影響し出すかもしれません。
作り方も簡単ですし固形尿素粒も使い切れないくらいありますから、容器の匂いを嗅いでアンモニア臭が感じられたら新しく作りましょう。
尿素水を使う際は注意深く観察しながら行うのが鉄則と心しましょう。
アルカリ性水質ではさらに注意深く
アンモニアは水中ではアンモニア態とアンモニウムイオンに分かれます。アンモニウムイオンは比較的無害なものですが、残りのアンモニアが有害なんですね。
アンモニアとアンモニウムイオンの比率はpHによって変わります。
水温25度pH7.0(中性)で有毒なアンモニア比率が約0.6%と言われていますが、pHが上がったり温度が上昇するとさらにアンモニア比率が高くなります。
アルカリ性に傾いた水槽で過密飼育が難しいのはこの要因も大きいと思うのですが、pHが高いとアンモニア態で存在する量が増える危険があります。
さらに弱アルカリ性水槽の多くが底床にソイルを使っておらず、アンモニアを吸着・保肥するソイルの特性ももちろんありません。
ゼオライト系のコトブキ工芸「ろかジャリ」は多少アンモニアを吸着しますけど。
(ろかジャリのみ底床の水槽。地元の水道水使用でC02添加ありpHは7.3〜7.5程度)
なので中性からアルカリ水質、ソイル底床以外の水槽で尿素水は、より注意して使う必要があります。
というか正直、ヤメておいた方が得策かも。
もしアルカリ気味の水槽で窒素欠乏が疑われる場合は、窒素入り固形肥を微量ずつ試すのが無難でしょう。
ちなみに水草の多くは弱酸性を好み、アルカリ性では育たない種もありますから、水質改善の点でも考えてみると良いかもしれません。
窒素不足の簡単な確認方法
窒素不足の確認方法は、当然ですが硝酸値を計測すること。
安価な試験紙タイプのもので十分です。
窒素不足の場合、硝酸値がほぼ検出されません。
硝酸塩濃度は10mg/l以下が魚やエビには理想と言われたりもしますが、25mg/l未満を維持していれば問題は少ないです。
唯一ビーシュリンプは、最低でも15mg/l以下にしてあげたいところ。
ちなみに活着する水草やウィローモス類がある水槽では、15mg/l程度あると育てやすいです。
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それともう一つ、簡単に窒素不足かどうかを確認する方法があります。
それは、調子の悪い水草の周りに新しい栄養系ソイルを投入すること。
新しいソイルを入れると有機分にバクテリアが反応して、一時的にアンモニアが発生します。
実は私もこれで、窒素が足りないのではと気付くヒントになりました。一般的なカリウム総合肥料でもダメで、ソイルを足した途端、不良だった水草が新葉を出したんですね。
尿素水を試す前にまずソイルを少し入れて、変化を見てみても良いかもしれません。
ただし吸着系ソイルではなく栄養系ソイルを使うこと、そして多量に追加すると環境が大きく変化するので注意。
尿素水が必要な状況は少ない
尿素水の自作方法から添加の仕方など書いてみました。
ただ、窒素分が枯渇して尿素水が必要になる状況は、言うほど多くありません。まずは本当に窒素不足かどうか、その前に基本的なことを確認しましょう。
例えば底床のカリウムと微量元素は足りてるか、pHや硬度は安定してるか、光量や波長など水草に向く照明か、水温は一定か、などなど。
その上で、尿素水も一つの手段として試してみるのが良いと思います。
- 人工餌を与える生体数が水槽サイズに対して少ない(居ない)
- 立ち上げ初期から豊富に水草がある
- 低栄養な吸着系ソイルに肥料食いな水草を導入
- 窒素入り固形肥を使わず長期的に水草豊富な水槽を維持している
主にこんな状況が複数重なると、起こりやすくなります。
そして原因が窒素と分かり、尿素水で水草が元気を取り戻すと、本当に嬉しいものです。
そんな時の参考になればと思います。
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