水草育成の基本は照明と栄養と水質水温
水草育成に必要な環境の作り方について。
水槽という隔離された環境で水草を育てるには、大きく分けて「照明(光)」「栄養(CO2含む)」「水質(水温も)」の3つのバランスが大切です。
こんなことはアクアリウムを少し知ってる方なら、もう何度も見聞きしてることかもしません。
でもやっぱりよく分かってない人が多いです。
“分かってない人”と言いましたが、これはアクアリウム初心者だけじゃなく、もう何年も水草に接してる人でもよく分かってない人は居るんですね。
よく分かってないと、一つの水槽をリセットせず何年も長期的に水草を育てることが出来ません。一時的に水草の良い状態は作れても、いざコケ被害や水草の不調が現れると上手く対処できない。
それは、水草がどうして育ってるか、十分理解してないからですね。
今回はこの「照明」「栄養」「水質」についてのお話です。
照明・栄養・水質に優先順位はない
まず初めに覚えておきたいのは、「照明」「栄養」「水質」に、優先順位はありません。
どれが一番大事とかじゃなく、すべて必須で、すべてが大事です。
なぜって、どれが欠けても水草は育ちませんから。
例えば、水草の欲する赤波長や青波長を含む光量が存分にあっても、窒素やリン酸、カリウム、微量元素など必須栄養が一つでも足りなければ水草は育ちません。栄養が枯渇してるのに光ばかり煌煌(こうこう)と当てられても、水草にとっては拷問でしかない。
はたまた照明や栄養が充分だったとしても、pHが高すぎたり水温が高すぎたりしても水草は枯れてしまう。
全てが適切な環境を作らなければ、水草が美しく育つ事はありません。
こう説明すると「難しそう」とか「出来そうにない」なんて思うかもしれませんが、正しい見方で環境を考えれば、実はそんな難しいことじゃないんです。
「照明」も「栄養」も「水質」もそれぞれに許容範囲がありますから、全てをシビアに管理しなければ水草が育たないって訳じゃありません。
pH6辺りが最適な水草がpH7で育たないかというとそんなことはありませんし、LED照明は赤LEDチップや青LEDチップがなければ育たないかというと、光量が十分足りていれば白LEDチップのみの商品でどんな水草種でも育っちゃう。
要は、全てが許容範囲内であってバランスが取れていれば良いわけです。
次に、それぞれについて触れていきます。
スポンサーリンク
水草水槽の優先順位は照明?
水草水槽でまず先にまともな装備を用意すべきと言われるのが“照明”です。
これは、植物が育つ上で光が大事ということ、そしてLED照明がまだ黎明期ながら水槽照明の主流になってきた事が挙げられます。
花壇の花を育てる時「水をたっぷりあげて十分に光を当てて」なんて、誰もがイメージしますよね。
ただアクアリウム向けLED照明はまだまだ発展途上だから、水草育成に物足りない組み合わせとなってしまう事もあり、“照明はちゃんとしたものを買うべき”と言われます。
これは確かにその通りで、最低限必要な光が水草に届かなければ育ちません。
ですが、あえて“水草育成に物足りない組み合わせ”と書いたのは、個々の水草ににとって必要十分な光であれば極端な話、水草用を謳うLED照明でなくても、ちゃんと育つんですね。
そして、強すぎる光が逆に水草を弱らせてしまうなんて場合もある。
水草種によって要求する光の度合いは違うわけです。
これがまず一つ、覚えておきたい点。
照明の基準は波長?光量?
次に「LED照明は赤色LEDチップが入ったものじゃなきゃ駄目」とか「白色チップのみの照明は駄目」なんて話。
これも半分合ってて、半分間違い。
確かにLED照明はその発光させる仕組みから、蛍光灯やメタハラに比べて赤波長の配光バランスが弱いです。そして植物は、主に青波長と赤波長を好んで光合成を行なっています。
だから赤波長のバランスが少ないと、光量的に育ちの悪いことがあります。
それで、「赤色LEDチップの入った商品を選ぼう」ってなるんですね。
じゃあ白色LEDチップのみの照明は水草が育たないかというとそんなことは全くなく、全体の光量が上がれば相対的に赤色波長も増えて、どんな水草もバッチリ育ちます。
水草水槽レイアウトを牽引するメーカーADAだって、白色LEDのみのアクアスカイ照明でどんな水草も綺麗にレイアウトしてるでしょう?
もちろん私も高光量の白色LEDチップ照明で水草を育てる水槽があります。
(白色LEDチップのみのアクロ「オーバル」。詳しくはこちらの記事もどうぞ⇒「アクロOVAL LED BRIGHTで水草水槽!成長具合から明るさ・色合いまで検証」)
これ、多くの方が勘違いしていますが、LEDも含め白い光には赤色波長も必ず含まれます。赤波長がなければちゃんと白くは見えませんから。
ただ、波長バランスが違うだけ。
だから光量がしっかりあれば、水草にも全然使えちゃうんですね。
水草が枯れる原因が照明ということは少ない
照明についてもう一つ大事なこと。それは、水草が育たない原因をすべて照明のせいにしないこと。
もちろんそれなりの商品を選ぶ必要はありますが、そうしたらあとは大抵が水質や栄養の問題です。
水草が這わずに立ち上がったり、成長が遅かったりという事はあっても、弱い照明が原因で水草が枯れることは少ない。
ですが水草が育たないと、「照明が駄目」と安易に思ってしまう方が多いんですね。
ちなみにもし栄養や水質が原因なのに照明を強化した場合、まず間違いなくコケがぐんと増えます。
これは水槽が富栄養というわけではなく、水草の活動が低下して吸収できず残っている栄養と、強い光でより衰弱して草体から流出する成分を糧に、コケが繁殖するわけです。
LED照明どうやって選ぶ?
じゃあどうやってLED照明を選ぶか。これはイメージする(導入する)水草種や水槽の形状によって最適なものも変わってきます。
先に書いたように水草種によって必要な光量も変わりますし、また、光は水中ではどんどん弱くなるので、水槽の深さによって必要な強弱も変わります。
照明選びについては、以下の記事もご覧ください。
⇒「水草水槽におすすめ照明は?LED照明の選び方」こちら
水草栄養は初めから意識したいところ
水草育成で一番難しいと思うのが、水草の栄養具合です。
照明はそれなりのものを選べばあとはずっと一緒ですし、水温もヒーターとサーモで管理するだけ。pHや硬度は、ソイルや大磯など底床材の違いやレイアウト石、水換えなんかも影響するけど、目安があるし許容範囲もある。
ですが水草の栄養は、はっきりした基準や具体的な目安がないから、水草の成長具合や草体の色、葉のサイズ、水槽のコケ具合なんかを総合して見なきゃならない。
水草によっても欲する栄養素のバランスは少しずつ変わってきますし。
コケを抑えて綺麗な水草の状態を維持するには、やはり栄養バランスをそれなりに覚えないと難しい。
もちろん肥料加減を覚えるのは簡単じゃありませんが、だからこそ、水草栄養を初めから意識してくことが大切です。
綺麗な水草の維持に栄養バランスは必須
ちなみに水草の栄養バランスについては、既に何年も水草水槽を経験していても、よく分かってない方も多いものです。
実は、必要十分な照明にヒーターやフィルターの基本装備、あと栄養に富むソイルを使えば、一般的に育成が容易と言われる水草種は、まずそれなりに育ちます。
だからいつも馴れてるソイルを使い、ソイルの栄養が枯渇してきたりコケが蔓延して対処出来なくなったらリセットするという経験者も多い。
もちろん、そういった水草水槽の楽しみ方もあると思います。
ですがそれだと、ちょっと難しいと言われる水草になると育てる事が出来なかったり、水草の美しさを深く楽しむことはできないかもしれません。
(コケが目に付かない状態がやはり心地良い。)
せっかく水草レイアウトをするなら誰でも、水草が綺麗に育つ事はもちろん、コケが無く手間も少ない水槽を維持したいところです。
手が掛からないその分、レイアウトの改善や新しい水草の導入に時間を使えますからね。
水草の綺麗な状態を維持する知識・栄養バランス・施肥の感覚を覚えると、水草レイアウトで出来ることの幅が格段に広がります。
しかも少し難易度の高い方が、やり甲斐もあって楽しいものです。
水草栄養について詳しくは、以下のページもご覧ください。
⇒「水草水槽に肥料を与えるやり方と考え方」こちら
水質や水温の失敗は初心者に多い
水草飼育の経験が少ない人の失敗原因として案外多いのが、水質や水温です。
個々の水草種が好む水槽水温やpHや硬度は、原産地の自然環境で慣れ親しんだものであり、その水質に合わせて進化してきたわけです。
私たち人間だって海外に行くと、料理が合わなくて腹痛になったり、日本と違う暑さや寒さで体調を崩したりしますよね。それと同じ。
でも水質や水温は目に見えないものだから、何気に忘れてしまうんですね。
だから繰り返しますが、水質や水温はとても重要。
水草の調子が悪かったらまず頭に浮かぶくらい、常に意識しましょう。「なぜこの水質でダメなんだろう?」なんて考える前に合わせてみる。
それについて、次項に続きます。
水質はソイルと水換えで調整が簡単
水質に関してはもう、目標値に近づけるように調整するだけ。難しく考えると上手くいきません。
水温は、サーモヒーターで一定調整。大抵の水草は23〜26度の範囲であれば、どの温度でも問題ありません。
ちなみにオートヒーターでも全然大丈夫です。
pHや硬度に関しては、pH6.0〜7.0程度、GH2〜4程度に調整すれば、多くの水草は育てられます。
「水温はともかく、pHや硬度を合わせるのは難しい」なんて思う方もいるでしょう。
そんな水草育成の経験が少ない方は、ソイルと水換えでバランスを取るのがおすすめです。ソイルであれば簡単に弱酸性pHの硬度3前後に傾きます。
もしソイルでpHや硬度が下がり過ぎたら、一時的に水換え頻度を増やせば上げることが出来ます。
とはいえ大抵の水草はpH5以上なら大丈夫ですから、あとは魚やエビのために上げる感じですね。
大磯砂やサンド底床など、ソイル以外の底床材は通常、pHや硬度が高くなってしまいます。
大磯はものによってミネラル分を溶出する場合もありますが、もし底床材がpHに影響してないとしても、水道水の水質がすでに弱アルカリ性という場合がほとんどだからです。
無理せず初めはソイルを選び、水草が育つ感じを体験しましょう。
ソイル選びについては、こちらもご覧ください。
⇒「おすすめは?ソイル選びで水草水槽の失敗が決まる!」こちら
下がり過ぎても牡蠣殻は使わない
もしpHや硬度が下がり過ぎても、水草育成で牡蠣殻を使うのはおすすめ出来ません。
牡蠣殻は主にカルシウムイオンを放出しますが、水草にとってカルシウム濃度が上がり過ぎるとその他ミネラルや窒素分、リン酸などの栄養吸収が阻害されて、悪影響を与えます。
ただでさえソイルのpH調整能力はミネラルを吸着することで徐々に衰えていきますから、ソイルの寿命まで短くしてしまいます。
また、pH上昇剤も不要です。水換えで対処しましょう。
水草の照明・栄養・水質まとめ
水草育成のための照明・栄養・水質について書いてみました。
基本の話のつもりが結構突っ込んだ内容になってしまいましたが、水草を育てる上で知っておきたい部分だと思います。
「水草を始めて試行錯誤してるけど、やっぱり分からない」なんて路頭に迷ってる方に、読んでもらえれば嬉しいです。
それにしても、水草って本当に面白い。
私も水草に触れ始めてからそれなりの年月を経験してきたつもりですが、それでも新しい発見があります。
いろんな国の多様な環境から来た新種が、日本にも日々入って来ますし、興味は尽きません。
関連記事
⇒「水槽のコケ対策は環境からが基本!」こちら
人気記事
⇒「水草にCO2添加の考え方と本質まとめ」こちら
スポンサーリンク