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ビーシュリンプ繁殖促進に腐植酸。

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ビーシュリンプの繁殖を促す腐植酸の実験記録

ビーシュリンプの繁殖を促す腐植酸の実験記録

 水草育成、熱帯魚飼育と並んでアクアリウムの一大カテゴリとなっているビーシュリンプ飼育

 ビーシュリンプ飼育といえば“繁殖”が大きなテーマとなり、抱卵から稚エビの誕生、成長して交尾と、ビーシュリンプを増やしていく楽しみがあります。

 ですがミナミヌマエビといった比較的繁殖の容易な種に比べて、ビーシュリンプの繁殖は少し難易度が高くなり、「交配してくれない」と悩む方も多いと思います。

レッドビーシュリンプ繁殖の歩留まり

 そこで、私の水槽で歩留まり(繁殖がない状態)しているレッドビーシュリンプ水槽に腐植酸を投入した実験的記録を書いてみます。

 歩留まり原因の一つとして、解決のヒントとなるかもしれません。

腐植物質にピートモスを使う

 今回、腐植酸の投入で用意した腐植物質は、ピートモスです。

レッドビーシュリンプ水槽にpH無調整ピートモスを使用

 飼育水pHを下げたりブラックウォーターを作るために使われる、ミズゴケなどの植物が腐植化した繊維質ですね。
 ちなみに腐植酸はフミン酸であり、フルボ酸と共に腐植物質と呼ばれます。

 “用意した”というより、家にあった腐植分というとこれしかなかったのが本当のところですが。(汗)

 ちなみに他にも、“ヤシャブシの実”とか“マジックリーフ”なんかもアクアリウムでは有名な腐植物質です。
 そして水槽レイアウトの定番“流木”も、少しずつですが腐植酸を出してます。ゆっくり朽ちている。

 脱線しましたがとにかくピートモスを入れたところ、歩留まりしていたビー達が突然、繁殖行動を見せ始めました。

ビーシュリンプ繁殖になぜ腐植酸?

 今回なぜビーシュリンプ繁殖に腐植酸に注目したかというと、ビーシュリンプ繁殖に定評のあるADA「アクアソイルアマゾニア」からでした。

 ADAアマゾニアソイルは、水草育成に優れた有機物を豊富に含み、有機酸の中でも腐植酸も充分に含有されてるんですね。
 アマゾニアを開封すると、園芸に使う腐葉土のような芳醇な香りがワッと漂ってきますから、よく分かります。

 私が現在ビー水槽に使っているGEXソイル「水草一番サンド」は、水草の栄養分は多く含まれているけど腐植物質は思ったほど多くなく、どちらかというと混ぜ込んだ肥料分の効果が強い印象です。
 それでも有機物が全く無いわけではなく、微生物が湧くには充分な栄養を初めから持っているのですけども。

 これまでビーシュリンプと同じ淡水エビのミナミヌマエビ繁殖の経験がありますが、ミナミヌマエビはそこまで深く考えなくても、濾過バクテリア環境が整い自然と微生物が湧く環境であれば、交尾・繁殖し始めます。

ミナミヌマエビ繁殖の基本的な条件

(ミナミヌマエビの抱卵)

 ですがビーシュリンプはその感覚で環境を作っても、早い段階で繁殖行動が途中から見られなくなりました。

 そこで水草一番サンドとアマゾニアソイルの個性の違いに注目したら、腐植酸の加減が大きく違うという点に行き着きました。

 そうなんです。水草一番サンドも腐植酸が全く出ないわけではありません。
 また熱帯魚の糞や水草の枯葉が堆積すれば、ソイルに含まれる有機酸と底床に繁殖するバクテリアが腐植酸を発生させるように考慮されてると思います。

 ですが私のビーシュリンプ水槽における飼育水をクリーンに保つ管理と、少ない活着水草のみの環境では、腐植物質は発生しづらいでしょう。

 そこで、腐植物質であるピートモスを投入してみました。

手順はピートモスをフィルターに投入するだけ

 どんな手順で腐植物質を添加したかというと、pH無調整ピートモスを一摘み外掛けフィルターに入れただけ。難しいことは何もしてません。。

pH無調整ピートモスを一摘み外掛けフィルターに投入

(ビー水槽は14リットル程の30cm規格水槽)

 “pH無調整”というのは、ピートモスは酸性度が強いため、園芸用では土壌pHが下がり過ぎないように添加剤を混ぜて調整してる商品があるんですね。

 これは調整してない自然そのままという感じ。

 ちなみに私が使ったのは、こちら。

 アクアリウム用に長い繊維だけを集めて飼育水にダストが舞いにくく、使いやすく処理されたピートモスです。

 園芸用に売られる大容量ピートモスに比べると割高ですが、これまで本当にちょっとずつしか使ってなかったので、何年も前に買ったものが未だにあります。。
 そう考えるとこれで良かったなと。

 一摘み1gなんて到底無いですから、たぶん3日ごと使っても今回の使用量なら、軽く数年は保つでしょう。

入れたら抱卵の舞が見れた!

 で、入れてみてどうなったかというと、抱卵の舞を見ることが出来ました。

 前日にフィルター内に投入して、翌朝、オスのシュリンプ達が慌ただしく泳ぎました。

 その動画がこちら。

(オスだけ興奮して舞ってる状態)

 動画の状況は「これから本番」という動き方なんですが、仕事で出掛けなければならず、残念ながら最後まで観察することは出来ませんでした。

 とはいえこれまで歩留まりが続いていた水槽で、大きな変化となる現象です。

 腐植酸の影響がビーシュリンプの生殖行動にどれだけ効果的か、よく分かる実験結果となりました。

ピートモスの入れ過ぎに注意

 ピートモスは一般的に飼育水のpH降下ブラックウォーターを作るために使われますから、入れ過ぎればどんどんpHを変動させ、飼育水も茶色く色付いてしまいます。

 pHを下げたいわけではありませんから、入れ過ぎないように注意します。

外掛けフィルターのピートモス量

(フィルター内にピートモスがフワフワと。長繊維ピートだからパック詰めせずそのまま。)

 今回のように30規格水槽に一摘み入れただけでも、エビ達は背を丸めたり脚でカキカキして反応しますから、少しずつ加減します。

足しソイルと要は同じ

 ちなみにこのピートモス投入は、要は足しソイルと同じ、その簡易版です。
 簡易版ですが、足しソイルより少ない量で腐植酸を強力に添加できるという感じ。

 足しソイルとは、立ち上がってる水槽に新しいソイルを少量追加することですね。

 ただし、足しソイルはどんなソイルでも良いわけじゃありません。
 これまで読んで頂いた方はお分かりだと思います。

 今回のようにビーシュリンプの活性を上げるには、腐植分が含まれたソイルでないと意味がない。

 吸着系ソイルや腐植分の少ないソイルを入れても、有効な効果どころか飼育水のpHやGH硬度を下げて、水質の変化がビーシュリンプにストレスになるだけですから。

 ビー水槽に足しソイルするなら、前述のアマゾニアのような有機物・腐植分の多いソイルです。

 そしてもちろん、しっかり立ち上がってる水槽が前提です。

 栄養の多いソイルはアンモニアの溶出もありますから、アンモニアや亜硝酸を素早く硝酸まで分解してくれる濾過バクテリア環境が不可欠です。

 入れ過ぎにも注意ですね。
 軽く一握りからでもエビ達はちゃんと腐植分に反応しますから、少しずつ加減調整します。

ビーシュリンプに腐植酸まとめ

ビーシュリンプ水槽に腐植酸まとめ

 ということで、ビーシュリンプ水槽にピートモスで腐植酸を入れた結果について、備忘録も踏まえて簡潔に書いてみました。

 ちなみにその後、レッドビーシュリンプの抱卵個体を確認できました。

ピートモス投入後レッドビーシュリンプの抱卵個体を確認

 初めてピートモス投入以降、ピートモスを撤去して水換え、再度ピートモス投入、ピートモス以外の腐植酸投入と、検証を続けてみましたが、腐植分を添加するとオスエビがメスの上にしがみ付く行動もよく見られ、興奮する印象です。

 やはり腐植酸がビーシュリンプの繁殖行動に影響を与えてるようです。

レッドビーシュリンプの抱卵と腐植酸の関係

 腐植酸(フミン酸)やフルボ酸のような腐植物質は、淡水に棲むエビにとって切っても切れない関係があるでしょう。
 森林を流れる川には春になれば雪解け水の増水で、堆積する落ち葉や倒木の腐植物質が豊富に流れてきます。水温は上がり、バクテリアの活性も上がる。

 動植物遺体がバクテリアによって分解された有機物である腐植物質には、ビーシュリンプや水草に必要な各種栄養が豊富に含まれてますから、エビの成長を促す高い効果があるでしょうし、エビ自身が繁殖期を知る、季節感を感じる要因にもなるかもしれません。

 これはミナミヌマエビにも当然当てはまるでしょうから、繁殖を促進する一つの方法として試してみるのも良いと思います。
 ミナミヌマエビはそこまで悩まなくても、スムーズに進んでしまうかもしれませんけども。

その後の追記

 ピートモス投入から初めての抱卵個体を確認して、その後の経過です。

 初抱卵確認後もフィルター内のピートモスは、3〜4日程度の周期で新しく入れ替えていました。

 その後も初抱卵に続いて、もう2尾(匹)の抱卵個体が出現。

レッドビーシュリンプの抱卵個体が3匹

 左3尾が抱卵中。手前が最初の個体、奥がその4日後、真ん中が16日後に抱卵。

 腐植酸投入前まで数ヶ月の間まったく交配を確認できませんでしたから、腐植酸の繁殖促進効果は大きいだろうと確信しています。

 そして初個体の抱卵から24日後に、初めての稚エビを確認しました。

レッドビーシュリンプの生まれたて稚エビ

 生まれた時からもう親エビと同じ容姿をしています。色も赤と白のレッドビーシュリンプ。かわいい。

 体長は約3mm。

レッドビーシュリンプ稚エビの体長

(ぼやけてますが、手前の縦線が物差しの1mm。)

 同時に6尾の稚エビを確認出来ましたが、いかんせん物陰が多いので、全てを確認することはできませんでした。
 ただこれまでのお腹の状態も考えると、今回一度に10匹前後は誕生してるのかなと思います。
(翌日、10尾までは同時に確認)

 またこちらは、誕生の数日前の卵の状態。

レッドビーシュリンプの大きくなった卵

 卵がかなり大きくなり、腹下から飛び出していました。

 抱卵してから物陰にいる事が増えましたが、この頃にはヒーターカバー内に隠れ出しました。

ビーシュリンプ抱卵個体が隠れる

(このヒーターは夏場で撤去前、ほぼ稼働してない)

 孵化を前に、外敵から卵と自身を守る防衛本能に見えます。たぶん孵化場所をここに決めたんだろうと。

 そして稚エビを確認した日の朝もカバー内にいて、そこから子ども達が顔を出していました。

 稚エビを見るまでは脱卵や未受精卵(無精卵)なんて不安もありましたが、とりあえずピートモスを使って一連の繁殖過程を見ることができ、ほっと一安心といったところです。

 ちなみに産卵を終えた親エビを確認したところ、もう腹下に卵は見当たりませんでした。
 前日まで抱えていたので、ほぼ一気に誕生するようです。

誕生後も腐植酸は大切

 さて、ピートモスの腐植酸は誕生後に不要になるかということですが、これは当然、続けた方が環境のために良いでしょう。

 歩留まりが起こる水槽環境では、腐植酸が圧倒的に足りない状況が予測されます。

マツモにレッドビーシュリンプ稚エビ達

(マツモに集まる稚エビ達)

 肥沃な大地の源である腐植酸は生命の源でもあり、稚エビはもちろん親エビにとっても餌となる微生物を繁殖させます。
 ビーシュリンプが過ごしやすい環境を作ってくれる。

 もしかしたら親エビ達は腐植酸の増加から、季節の移り変わりによる飽食の時期が始まる事を、遺伝子的に感じ取るのかもしれません。だからピートモスの腐植酸でも、繁殖に導かれる。

 まだまだ考察は続きますが、一つの記録として。

 ちなみにその後、これまでの経験を元に、ビーシュリンプが繁殖する環境づくりの特に重要な3大ポイントも書いてます。
 よろしければ、こちらもご覧ください。



 

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