新しい水槽立ち上げのパイロットフィッシュはどの魚が良いの?
新しい水槽立ち上げに必要な熱帯魚が、パイロットフィッシュです。テストフィッシュとか、スタートフィッシュなんて呼ばれることもあります。
もしかしたら「パイロットフィッシュって何それ?」という方もいるかもしれないので、ちょっと説明しますね。
パイロットフィッシュとは、水槽を新しくセットした時に一番最初に住んでもらう(入れる)魚の事です。
アクアリウム水槽は、ただ水と砂利と水草を入れれば完了という訳ではありません。
底床材(ソイルや砂利)や、外部式フィルター・壁掛け式など濾過装置の濾材(ろざい)に、食べ残した餌や魚の糞などの汚れを分解してくれる濾過バクテリアを着床・定着させる事で、水槽の水を綺麗に保つ環境が出来上がります。
そのバクテリア達に早くスムーズに定着してもらうために、生体が排出する糞やアンモニアが必要であり、パイロットフィッシュが大切なんですね。
つまり、バクテリアの餌となる排泄物を出す役割がパイロットフィッシュであり、パイロットフィッシュの活躍のお陰で、他の魚やエビが生活できる水質環境が完成します。
ちなみに、熱帯魚や金魚、エビといった生体を入れる予定がまったくない水草のみの水槽には、パイロットフィッシュは必要ありません。
もちろん水草水槽でも、ソイル養分や水草の枯れ葉などが餌となって、ゆっくりとですが水草生育に合ったバクテリア環境が勝手に整っていきます。
英語のPilotFishはブリモドキ
ちょっと雑学ですが、パイロットフィッシュを英語で書くと“Pilot Fish”です。これを日本語に訳すと“水先人の魚”という意味で、一般的に海水魚の「ブリモドキ」のことを指します。
ブリモドキはスズキ目アジ科の魚で、自分より大きなサメやマンタ、船、流木などに寄り添って先導するように泳ぐ習性から、その名前が付けられたそうです。
確かに、水槽立ち上げでも先陣切って真っ先に泳ぐ魚ですから、そう呼ばれるのかもしれないですね。
おすすめパイロットフィッシュは丈夫な魚
パイロットフィッシュは、環境がまだ完全でない水槽に生活してもらう魚ですから、やはり多少の水質の変化にもびくともしない丈夫な魚が理想です。
そこでパイロットフィッシュとしておすすめなのが、熱帯魚ではコイ科のアカヒレやラスボラ・エスペイ、あと熱帯魚とは違いますがメダカや、金魚水槽なら丈夫な和金などです。
(和金とは、金魚すくいでも見られる、ごく一般的な普通の金魚です。)
強靭というわけではないですが、安価で人気の高いネオンテトラなどをパイロットフィッシュに選ぶ方も多いですね。
(左がラスボラ、右はネオンテトラ)
その他メジャーなところでグッピーやプラティもメダカの仲間で、思ったより強く生き延びてくれます。
水槽底面をチョロチョロと愛嬌のあるコリドラスも人気の熱帯魚ですが、ナマズの仲間で若干繊細で臆病な面も。
飼育も難しいことはなくパイロットフィッシュとして不可能ではありませんが、餌が沈降性(沈むタイプ)になるので、水槽立ち上げ時期は特に食べ残しに気を付けましょう。
バクテリア環境が不完全な状態での食べ残しは、水カビの発生や水質の汚れにすぐ繋がります。
パイロットフィッシュ選びで大切な事
パイロットフィッシュ選びで大切なのが、どんなイメージの水槽にしたいかということです。
なぜって、無事に水槽立ち上げが済んでも、パイロットフィッシュはまだまだ長生きするわけですから。
立ち上がったからパイロットフィッシュを捨ててしまおうなんて非道な事は出来ませんよね。
なので、金魚の水槽にしたいのであれば、金魚の中でも丈夫な和金などが良いかもしれませんし、アカヒレやラスボラでもカラーに種類がありますから、自分の好みを選ぶのが大切です。
パイロットフィッシュが作るバクテリア環境とは
パイロットフィッシュが作るバクテリア環境とは、生体が排出するフンなどの汚れ(有機物)を生体に影響の少ない成分にまで分解してくれる濾過バクテリアのことです。
各種バクテリアによって有機物はアンモニアになり、亜硝酸になり、硝酸になります。
有機物⇒アンモニア⇒亜硝酸塩⇒硝酸塩
これを硝化作用と言います。
この分解の過程で発生するアンモニアや亜硝酸は、生体にとって毒性が強い物質です。
なので、アンモニアを分解してくれる菌、そして亜硝酸を分解してくれる菌がそれぞれ育ってくれないと、生体はダメージを受け続けます。ましてや弱くて神経質な魚などはイチコロなわけです。
ちなみに、最後に残る硝酸は比較的毒性が低い成分なので、ここまでしっかり分解されるようになれば水槽立ち上げが完了になります。パイロットフィッシュとしての役割は終了です。
硝酸は水換えで減らす
最終的に残る硝酸であっても、濃度が高まると生体に影響します。
そのため、ちゃんと立ち上がってる水槽でもずっと定期的に水換えをするのは、上がり気味の硝酸濃度を下げる意味もあります。
パイロットフィッシュはごく少数で
パイロットフィッシュは小型魚(体長3〜4センチ)をごく少数で充分です。初めから魚を多く入れてしまうとアンモニアや亜硝酸濃度が上昇し過ぎて、水槽が立ち上がる前に入れた魚が死んでしまい、パイロットフィッシュどころではありません。
ちなみに入れるパイロットフィッシュの数については諸説ありますが、私の経験では水槽容量に対して10リットルあたり小型魚1匹程度が、無難に水槽を立ち上げられる目安だと思います。
60センチ規格水槽(容量65リットル)であれば6〜7匹、容量20リットルであれば2匹という感じです。
もちろん設置したフィルターの性能や底床、水草の量など、環境の違いによってもパイロットフィッシュの適量は変わりますが、要は糞などの有機物が分解される段階に合わせてバクテリアが増えてくれないと、水質は悪化する一方になってしまいます。
なので、初めから多く入れないようにしましょう。
大型魚を育てたい場合は?
アロワナやポリプテルスといった大型魚を育てようと思ってる場合は、どちらにしろ大きい魚は水槽サイズに対して育てられる数も限られますし、その目的の魚の稚魚(幼魚)をそのまま選んでも良いと思います。
ただ、将来大きくなる事を見越して、1〜2匹と数をかなり少なめに考える必要はあります。
初めから高価な魚種では不安だったり、既に大きい成魚を買おうと思っているなら、メジャーな生き餌用のメダカをパイロットフィッシュに選ぶと良いでしょう。
パイロットフィッシュはテストフィッシュとも呼ばれるように、少し酷な言い方ですが、生体がちゃんと生きていける環境になっているかを試す魚という意味ですから。
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ぶっちゃけパイロットフィッシュは必要なの?
「砂利も水草も入れないけどパイロットフィッシュは必要なの?」と思う人もいるかもしれません。
もし砂利や水草も入れない水槽であっても、濾過フィルターや、正確には飼育水にもバクテリアがいてくれないと水質環境は整いませんから、有機物を排出してくれるパイロットフィッシュは有効です。
でも実はバクテリア環境を作るのに、必ず生体が必要という訳ではありません。有機物であれば死んだ魚や生の刺身、人工餌などを投入しても、しっかりバクテリアが増殖してくれます。
なので、「別に飼いたくもない種類の魚を水槽に入れたくない」というのであれば、熱帯魚のエサや刺身を沈めておいてもバクテリアを定着させる事は可能なんですね。
だからエビと水草だけの水槽を作りたいという場合など、エビを投入する前に、水草を植込んだ水槽に魚の切れ身を入れておいて、亜硝酸濃度がほぼ無くなったらヌマエビやビーシュリンプを入れるという方法もあります。
注意が必要なのは、エサや刺身に付く水カビ。
水カビは水槽内に蔓延すると水草にも移ったりしますので、水カビが酷くなる前に新しい切れ身と交換しましょう。
とはいえパイロットフィッシュは、生体がちゃんと生きていける環境になっているかを調べるためでもあるので、繊細なエビ類などでぶっつけ本番というよりは、丈夫な熱帯魚で水質が安定してるか様子を見る方が、安心はできますね。
ちなみにこの方法をパイロットフィッシュを入れる前に行えば、パイロットフィッシュの死亡率をかなり抑える事が出来るので、おすすめです。
生体はいないけど、底砂や水草、ヒーター、照明、フィルターなどすべて設置した状態にして、一週間ほど餌だけ添加するといった感じ。この間、水換え無し。
バクテリアも水温管理が大切ですから、初めから冷却ファンやヒーターを忘れずに。オートヒーターで一般的な18〜26度の範囲なら大丈夫です。
そして魚を入れる前に、水槽水を半分換水しましょう。沈んでる餌も吸い出しながら。
高栄養ソイルもアンモニアを溶出する
高栄養ソイルは、初期にアンモニアを溶出します。特にADAアマゾニアソイルは別格で、多量のアンモニア溶出でバクテリア定着がかなり進むレベルです。
そのため、高栄養ソイルを使った水槽立ち上げでは、ソイルからのアンモニアや亜硝酸が出なくなったらパイロットフィッシュを入れるようにします。その期間、約ひと月。
でないと、ソイルから溶出されるアンモニアや亜硝酸の影響で、魚が死んでしまいます。
正直なところ高栄養ソイルの場合は、魚が入れられる段階にはもうバクテリア環境の基礎が出来ているので、パイロットフィッシュとは言い難いのですが、それでも一気に魚をたくさん入れて環境を大きく変えるのではなく、少しずつ増やして環境を作っていくのが失敗しないセオリーです。
パイロットフィッシュの期間は?
一般的に、バクテリア環境が整う水槽立ち上げ期間は、順調に進んで3週間から1ヶ月ほど掛かります。
水槽に水をはり、フィルターを回して数日、その後にパイロットフィッシュを投入してからは頻繁な水換え作業です。
初めのうちは毎日、水槽容量の3分の1程度を換水しながら、アンモニア濃度の上昇と降下、そのあとに起こる亜硝酸濃度の上昇と降下を換水で乗り越えながら、パイロットフィッシュの体調を注意深く観察します。
亜硝酸から硝酸に分解してくれるバクテリア種の着床に少し時間は掛かりますが、そのうち亜硝酸濃度がグッと下がり、アンモニアも亜硝酸もゼロ濃度になれば、もっとも危険な立ち上げ期間は終わりです。
これで、新しい魚を迎え入ることが出来ます。
ただし、熱帯魚を増やす際は少しずつが鉄則。
各種バクテリアは着床したとしても、数少ないパイロットフィッシュの出すアンモニアで育ったわけで、バクテリア環境の処理能力はまだまだ非力です。ドカッと増やさず、加減しながら増やしていきましょう。
バクテリアの種があると早く立ち上がる
ちなみに、もし既に立ち上がってる水槽が他にあれば、少しでもその飼育水を使うと立ち上がりが格段に早くなります。各種バクテリアを貰って放り込むわけ。
バクテリア環境が整ってる水槽水はキラキラしてとても綺麗ですが、目に見えないバクテリアが浮遊してるんですね。
バクテリアの種と言っても市販のバクテリア剤じゃありません。数多くのバクテリア剤が売られていますけど、ああ言った商品を使わなくてもちゃんとバクテリア環境は出来ますからご安心を。
空気中から勝手に入り込んで着床してくれるんですね。
パイロットフィッシュのまとめ
(左からゴールデンバルブ、ブラックネオンテトラ、ネオンテトラ)
パイロットフィッシュに人気の丈夫な魚種や、水槽立ち上げ時のバクテリア環境作りについて書いてみました。
アクアリウムは生体を飼うわけですから、命を無下には出来ません。安定した水槽環境を整えるためのパイロットフィッシュは、言ってみれば切り込み隊長のようなもの。
だからこそ、より慎重に物事を進めたいところです。
この水槽立ち上げ中は理想のアクアリウムを作るための準備期間ですが、とても大切な過程ですから、気長に行う気持ちも重要だと思います。
どうしても気持ちが先走って熱帯魚を増やしたくなったり、水草の肥料やCO2を添加したくなりますが、ここはグッと堪えたいところです。
まして水草肥料なんて、栄養があるソイルを敷いていれば正直なところ数ヶ月は不要ですし、そんな状態で追肥すれば、茶ゴケや黒髭ゴケが増えて水質はどんどん悪化してしまいますから。
心配になっていろいろと手を出してしまうより、水換えのみ適切に行い、後はじっと見守る方が、上手に立ち上げるコツとも言えると思います。
(※もちろん水温管理のためのヒーターやフィルターなどの濾過装備、水草のための照明装置、水道水のカルキ抜き(塩素抜き)など、必要最低限のものは無ければ駄目ですよ!)
また、立ち上げ後も水換えが不要になる訳ではありません。
立ち上げ期ほど換水の必要はありませんが(というか安定期になったら頻繁な水換えは逆効果)、週1回から2週に1回、3分の1ずつなど、換える必要があります。亜硝酸の後に発生する硝酸は生体に影響が少ないと言っても、濃度が高くなれば問題です。
(硝酸濃度があまり上がらないのなら、水換え回数は少ないに越した事はありません)
水換えについて詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
最後に。
いろいろ書いてきましたが、ここに書いた立ち上げ方法がすべてではありません。水槽サイズやフィルター性能、底床(砂利やソイル)、水道水のpH(ペーハー)、水草の種類や量、パイロットフィッシュの種類や数によっても、状況は変わってきます。
そしてパイロットフィッシュはこれじゃなきゃいけないというワケでもありません。
どんな水槽立ち上げでも変わらないのは、魚の排泄物など有機物を投入して、アンモニア分解バクテリアと亜硝酸分解バクテリアを定着させる事。
ですから、一般的に挙げられるパイロットフィッシュは水槽立ち上げがしやすいというだけで、餌を食べて呼吸し排泄してくれる生体であれば、どんな魚でも良いとも言えます。
バクテリア環境が整う前に死んでしまえば当然うまく立ち上がらないので、少し生命力の強い種がオススメされるということですね。
ちなみに、パイロットフィッシュの体調を見ながら換水頻度を調整するために、アンモニア濃度や亜硝酸濃度を計測できるアイテムがあると、明確に立ち上がり具合が分かるので便利です。
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熱帯魚やエビが元気に泳ぐアクアリウムを成功させるために、参考になれば幸いです。
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