赤い水草を綺麗に色付けるコツ
(水草ルドウィジア・インクリナータ)
水草水槽でレイアウトのアクセントとして、彩を添えてくれるのが赤系水草です。赤い水草がバランスよく配置されていると、華やかさが際立ちますよね。
ですが思うように赤くならず、悩まれる方も事も多いです。
そこで、赤くなる水草を綺麗に色付ける方法、赤い種をしっかり発色させるコツについてご紹介します。
水草が赤くなる理由
そこでまず知っておきたいのが、“水草が赤くなる理由”です。
水草が赤くなる色素はほとんどの場合、ポリフェノール(有機化合物成分)の一種であるアントシアニンが葉や茎の表面に作られる事で赤くなります。
(アラグライア・レッドクロスプランツの紅葉)
ではなぜアントシアニンが作られるかというと、それは光合成活動が抑制された時。
例えば、以前から「赤い水草をより赤くするなら、照明をより明るいものにすると良い」と言われますが、これは水草が光合成を行う限界以上に強い光を受けると、葉の組織が破壊されないように赤色色素を作り、過剰な光量を遮ろうとするから。
つまり強光がストレスとなり、「眩しいから光弱くして!」となる。アントシアニンの赤色は、いわばサングラスのような役割を果たすわけですね。
もちろん赤くなる理由は、高光量だけではありません。
ただ共通して言えるのは、水草がストレスを感じて成長が抑制されたとき、葉の表面にアントシアニンを作って葉緑体が受ける光を弱めようとする。
この作用が、赤くなる大きな理由です。
そして“葉が赤く見える”ということは、赤波長を葉の表面で反射しているから赤く見える、葉の内部にある葉緑素に届きにくくなるということです。
葉を赤くする方法
水草の葉が赤くなる代表的な方法を、以下に挙げていきます。
光量を上げる
先に書いたように、光を強める。
特に600nm〜750nm(ナノメーター)あたりの赤色波長光を強めることで、分かりやすく赤みを帯びていきます。
赤波長の強い照明と言われても難しいかもしれませんが、要は赤く見える光って解釈して大方間違いありません。
(植物育成用の赤色LED電球は赤色波長)
例えば赤色球を使ったスタンドライトを補助灯として追加しても良いわけです。
とはいえ赤色光を増やすと鑑賞性(見た目)が低下するので、LED照明との組み合わせも重要です。
もちろん、水草用を謳う高光量な機種や蛍光灯スタンドを追加する方法だって効果抜群です。
CO2添加を調整する
CO2は光合成要素の一つであり、水草は光合成によってCO2固定し養分を作りますが、水槽内のCO2を枯渇させると光合成が鈍り、赤みが増しやすくなります。
また、CO2をより多く添加する事でも、栄養の消費を加速させて枯渇が早まり、貧栄養のストレスから赤みが出やすくなります。
どちらにおいても、光に対して光合成活動が鈍り「光を弱めて!」となる。
CO2の増加と停止のどちらが良いかは水草種や水槽環境によっても変わってきますから、どちらも試してみると良いでしょう。
もし他の水草でCO2を多く欲する種がある場合は、CO2供給を増やす方向で調整した方が良いですね。
ただしCO2による赤味調整には、水草が成長できる一定のレベル以上の光量である必要があります。例えば「水草はちゃんと成長するけど、葉が緑色のまま」なんて状態です。
鉄分液肥を添加する
鉄分液肥を添加して濃度が上がると、マンガンや亜鉛や特にリン酸の吸収・消費を抑制してストレスとなり、赤く色付きます。「光を弱めて!」となる。
鉄液に関しては、以前からよく聞く方法ですね。
(ロタラロトンディフォリアが鉄液添加とリンの少なさで赤くなった状態。)
ただこれについては、必要以上に鉄分を添加すると水草が利用できないリン酸鉄が増加・沈殿して、水草の根を痛めたり黒ひげコケが増えたりと徐々に環境に悪影響を出し始めます。
鉄液を添加してる時点で鉄分比率は強めになりますから、少なめに加減しましょう。
また鉄液についても、水草が成長できる最低限の光量がある前提です。
ちなみに、“水草の赤は酸化鉄の赤”なんて聞く事がありますけど、そんなわけありません。
その他、赤くする方法
これらの他にも、消灯中に差し込む微弱な光を完全に遮り、点灯中と消灯中の明るさのギャップをしっかり作ることで、水草が受ける光に敏感に反応するようになって赤みが増したり、20度付近まで水温を下げることで光合成活動を鈍らせて、赤みを出す方法もあります。
水温に関しては、その他水草種や魚にとって有害な環境となる場合もあるので、オススメするのではなく一つの手段として挙げています。
元から赤い水草は?
ちなみに水草には、元から赤い種類もあります。ルドウィジアsp.スーパーレッドなんかは有名ですね。
(水草ルドウィジアsp.スーパーレッド)
こういった通常から赤い水草の場合は、上記に挙げたような“赤くする方法”は逆に、発色の綺麗な赤というより深い真紅に近づいてしまいます。
なので、元から赤い種をより綺麗に発色させるなら、窒素やリンを十分に吸収できるようにしてあげます。
そうすることで柔らかく透明感のある明るい赤色になります。鮮やかなピンクという感じに。
とはいえ元から赤い種だって、アントシアニンによる発色の原理は同じなんですね。ただ後から赤くなる種よりも、赤色色素を容易に生成するというだけ。
だからスーパーレッドでも光の当たらない陰にある下葉は、赤色色素が出ず緑色の葉(葉緑素の色)になったりします。
(光が少ない状況では赤色色素を出さず、出来るだけ光合成を行おうとする。)
またこういった元から赤い種には、成長が遅かったり光量が必要だったりするものが多いのですけど、やはり赤色色素が光合成を抑制しちゃう部分も大きいですね。
「じゃあなんで赤く進化したのよ!?」なんて思っちゃうんですけど、故郷の原産地では強い日光や赤外線が降り注ぐんだろうなって思います。
水草を赤くする方法まとめ
(美しいロタラ・マクランドラの赤い発色)
水草を赤くする方法について書いてみました。
読んでお分かりのように水草が赤くなる理由の大前提として、植物成長に大きく影響する赤波長光を赤色色素で遮る生理現象ということです。
なので照明は、水草が適切に成長できる最低限の光量や波長がないと、水草を赤く操作するのが難しくなります。照明については以下の記事もご参考ください。
⇒「水草水槽におすすめ照明は?LED照明の選び方」こちら
また、水草が元気に育つ環境がうまく作れない場合は、赤く色付ける前に水草が好む環境を整えることが先決です。以下の記事をご覧ください。
⇒「水草育成の基本は照明と栄養と水質水温」こちら
最後に。
この赤くなる現象は正直なところ、水草にとって決して居心地の良い環境とは言い難いように思えます。実際の水草の気持ちは解りかねるのですけど。
そのため、加減を誤ると水草が弱ってしまうこともありますから、注意してください。
それを踏まえて、
- 1、消灯中の完全遮光
- 2、光量を上げる
- 3、CO2を調整する
- 4、鉄分液肥を添加する
- 5、水温を下げる
という順番に、安心して行える方法でしょう。
関連記事
⇒「ルドウィジアsp.スーパーレッドの育て方」こちら
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